産経ニュース

熊本・多良木町の「過疎化」解消 「集落支援員」制度、曲がり角

地方 地方

記事詳細

更新


熊本・多良木町の「過疎化」解消 「集落支援員」制度、曲がり角

休校となる槻木地区の小学校で、植樹に参加した上治英人さん(中央左)と家族=7月20日 休校となる槻木地区の小学校で、植樹に参加した上治英人さん(中央左)と家族=7月20日

 ■人材・待遇めぐり意見割れる

 少子高齢化に伴う過疎化を食い止めようと、熊本県多良木町の前町長が槻木(つきぎ)地区で4年前から始めた「集落支援員」制度が、曲がり角を迎えている。現職町長が見直しを打ち出し、福岡県から移住した支援員は辞職して町を去った。どのような人材がふさわしく、どのくらいの待遇が適切なのか-。関係者の考えは割れている。

 槻木地区は宮崎との県境の山間部にある。国勢調査などによると、昭和35年に1379人だった人口は、今年7月1日時点で122人に減った。町内5地区の中で、最も少ない。65歳以上の高齢化率は77・0%で、町全体の平均よりも38・2ポイントも高い。

 町は平成25年秋以降、総務省の制度を活用して集落支援員の取り組みを始めた。介護施設職員だった福岡県春日市の上治英人さん(45)を、非常勤職員として公募採用した。上治さんは妻と幼い娘2人を連れて移住した。町は、休校していた地区の町立小を7年ぶりに再開し、敷地内に家を建てて提供した。

 上治さんの仕事は、「何でも屋」のような位置付けだった。診療所へ通う高齢者の送迎や、地区でとれた野菜を福岡市内へ売りに行った。住民からは「困ったことを助けてくれる。頼りにしていた」との声が多く上がっていた。

 制度導入を決めた当時の町長、松本照彦さん(69)は「同じ問題を抱えた地域は全国にある。活性化のモデルにしたかった」と振り返る。

 ただ槻木地区の人口は、町民約9800人のうちの1%強に過ぎない。今年2月の町長選で地区振興策見直しを訴え当選した吉瀬浩一郎町長(69)は、上治さんへの報酬を1割減らし、地元出身者を支援員にする方針を示した。

 上治さんは一昨年に3人目の娘が生まれて家族が増えていたが、今年7月末に支援員を辞職し、一家で福岡県へ戻った。8月からは、地元出身の新しい支援員が着任。小学校はまた休校になることが決まった。

 吉瀬町長は「上治さんへの報酬は、他の非常勤職員よりも割高だった。地元出身者の方が、災害時に迅速な対応ができる」と説く。

 松本さんは「子育て世代に仕事を辞めて移住してもらう報酬として、妥当な額だった。町外の人の方が、地域の良さを発見してくれると思った」との考えだ。

 熊本大の山本努教授(地域社会学)は「地域の役に立ちたいという志のある支援員と、住民、行政。相互の信頼関係こそが重要」と指摘した。