産経ニュース

【暗闘 茨城知事選の舞台裏】(上)「自民の傀儡」阻止 橋本知事、気勢

地方 地方

記事詳細

更新

【暗闘 茨城知事選の舞台裏】
(上)「自民の傀儡」阻止 橋本知事、気勢

 「自民党県連は操り人形をつくろうとしている」「(知事選で負けたら)自民党県議の一部の連中の傀儡(かいらい)政権だ」

 8月27日投開票の知事選に向け、7月16日夜に水戸市千波町の水戸プラザホテルで開かれた現職、橋本昌(71)の総決起大会。詰めかけた約2500人を前に、選対本部長を務める北茨城市長の豊田稔は声を張り上げた。橋本も「自分の思う通りにならない知事を代えようとしている」と対決姿勢をあらわにした。

 「操り人形」が、橋本の対抗馬として自民党県連が擁立した元経済産業省職員の新人、大井川和彦(53)を指していることは明らかだった。

 橋本は「東京都議会のドン」と呼ばれた内田茂氏を念頭に「東京ではドン支配が終わった。茨城では第2の山口武平になりたいという人がいる」とも訴えた。山口は長きにわたって同党県連を率い、中央政界とも太いパイプを持つ茨城政界の重鎮だった。橋本に対しても影響力を持っていた山口だが、平成21年の知事選で対抗馬を立てながら、橋本に5選を許し、県連会長の座を退いた。

 ◆かつては蜜月関係

 今や敵同士となった橋本と自民党県連だが、かつては蜜月の関係を築いた。

 5年9月26日午後9時すぎ、水戸市千波町の事務所で、初当選を確実にした橋本は山口や元官房長官の梶山静六らと固い握手を交わした。前自治省課長だった橋本はこのとき47歳だった。当時を知る元県議は「橋本では物足りないと思った。こんなに長く知事をやるなんて誰が想像したか」と振り返る。だが、9年、13年の知事選も自民党は橋本を推薦。17年の4選も自民党県連が推薦した。自民党には知事は原則3期までしか推薦や公認はしない規定があり、橋本と政策協定を結んで支援した。

 ◆“密約”の存在暴露

 この蜜月関係が完全に崩壊したのは、21年の知事選だった。自民党県連は対決姿勢に転じ、対抗馬として元国土交通省事務次官、小幡政人を擁立。4年前の知事選前に「4期限り」とした“密約”の存在を暴露し、「引退して後進に道を譲るべきではないか」と事実上の引退勧告までした。だが、橋本は“密約”の存在を否定し、知事選では74万3945票を獲得、5選を果たした。県連会長の山口らは責任を取って退陣した。

 25年の知事選で自民党県連は独自候補も出せず、橋本は6選を果たした。

 「候補を選定する過程でも菅(義偉)官房長官に助言をいただいた」

 4月8日、水戸市千波町の県民文化センター大ホールに菅を招いて開かれた時局講演会で、自民党県連会長の梶山弘志は、大井川と安倍晋三政権との近さをアピールした。自民党は菅に加え、茨城では根強い人気を誇る前地方創生担当相の石破茂、政調会長の茂木敏充らが次々と大井川の支援に入った。

 大井川陣営の一人は「自民党県連は、8年前と同じようにならないように一生懸命だ。本気度が違う」と自信をのぞかせる。

 橋本は総決起大会で自民党に対する対抗意識をむき出しにした。

 「茨城の知事を選ぶのになぜ中央がこんなに絡んでくるのか。茨城県民に任せればいい!」

 そして橋本と近いとみられていた公明党も大井川の推薦を決めた。これも党本部の意向だった。=敬称略(上村茉由、鴨川一也、丸山将)

                   ◇

 知事選は、現職の橋本昌氏と、自民党県連が擁立した新人の大井川和彦氏が立候補を表明し、保守分裂の構図が固まりつつある。これに、日本原子力発電東海第2原発(東海村)の再稼働反対を掲げるNPO法人理事長の新人、鶴田真子美氏(52)も出馬の意向を明らかにし、知事選の情勢は混沌(こんとん)としている。3氏は真夏の決戦に向け、すでに活動を本格化させている。知事選の舞台裏を追った。