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国東のバジル、地域潤す キユーピーの全量調達「もうかる野菜」で安定収入 大分

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国東のバジル、地域潤す キユーピーの全量調達「もうかる野菜」で安定収入 大分

先輩農家(左端)から、バジルの苗木の育て方を教わる甲斐蔦子さん(左から3人目)ら=4月、大分県国東市 先輩農家(左端)から、バジルの苗木の育て方を教わる甲斐蔦子さん(左から3人目)ら=4月、大分県国東市

 大分県国東市で生産されるバジルが、地域を潤している。食品大手のキユーピー(東京)が調達するほぼ全量を賄っており、安定した収益を得ている。調味料に使われるバジル作りに国内生産が少なかった20年前に着手し、品質を高めて「もうかる野菜」に育てた。

 4月下旬、国東市の畑で今年からバジル生産に加わった約20人が、先輩の農家から講習を受けていた。

 その一人、甲斐蔦子さん(59)は「他の作物に比べても、経費が少ないのが良いですよね」と、バジルの魅力を語った。

 近くに加工場を置く有限会社「くにみ農産加工」(同市国見町)が、講習会を主催した。

 同社は収穫物を買い取り、農家約90人に、年間約1億円を支払う。

 この地域では複数の作物を手掛ける農家が多いが、バジルだけで300万円を上回る収入を得る農家もある。2代目社長の吉丸栄市さん(49)は「耕作適地が限られ、単価の高い野菜を作る必要があった」と指摘する。

 同社は国東市が3割、キユーピーが2割を出資して昭和56年に設立された。当初はタマネギやニンジンなどを生産、加工したが、他の産地との競争力がつかなかった。

 平成9年、キユーピーからの受託でバジルの試験栽培に着手した。国内での栽培方法は確立していなかった。だが、瀬戸内海に面する温暖な土地はバジルが広く生産されている地中海周辺と気候が似ており、「できる」とにらんだ。

 やがてカルシウムやベータカロテンを豊富に含むことが知られると、需要が一気に増えた。現在は千葉、静岡、沖縄各県などでも栽培されている。「くにみ」と農家は初年度に1トンだった収量を、20年で約100倍に拡大した。それでも、キユーピーの製品を使う大手コンビニエンスストアの増産要請には、追い付かない状態だという。

 品質管理は厳しい。新芽が出た柔らかい葉を採取するため、はさみを入れる位置を農家に細かく指示し、加工場では異物の除去を徹底する。

 キユーピーはかつてタイからバジルを輸入したが、調達価格が海外産より2割程度高くても、大分産を選ぶ。

 バジルは環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)で、関税が即時撤廃される品目だ。米国が離脱し、協定が発効するかは不透明だが、将来は安価な海外産との競争が激しくなる可能性がある。

 吉丸社長はパクチーも栽培し、キユーピーが今年2月に発売した商品に使われた。消費者が求める農作物とは何か。この先も研究し、探る日々が続く。