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規模縮小でILC早期建設へ 北上山地への誘致実現なるか

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規模縮小でILC早期建設へ 北上山地への誘致実現なるか

 岩手・宮城両県にまたがる北上山地に建設が構想され、地元が誘致活動を進めている次世代の大型加速器「国際リニアコライダー(ILC)」について、国内の研究者による検討チームは、加速器の全長を31キロから20キロに縮小する方針を固めた。

 最大の課題である1兆円近い建設費を30~50%削減できるとしており、米国や欧州の資金を呼び込んで早期建設につなげる狙い。ただ、加速器のエネルギーが半分に落ちるため、当初計画が目指す「宇宙誕生直後の状態を再現する」実験の一部ができなくなる。

 7月以降に縮小案をまとめ、各国の研究者に提案する。関係者は「規模を抑えて早く建設したい。将来的に、当初の規模に拡張することも可能だ」としている。

 ILCは2本の加速器を直線上に並べて電子と陽電子を両側から放ち、真ん中で衝突させて素粒子レベルの反応を調べる装置。138億年前のビッグバンに匹敵する高エネルギー状態の再現を目指す。

 関係者によると、縮小案は加速器の両端を各5キロほど短くし、装置の全長を31キロから20キロにする。

 北上山地を貫く地下トンネルの造成費を抑えることができるほか、粒子を加速する超電導磁石も少なくて済み、建設費を30%以上減らせる。機器の開発見直しで、コストを半減することも可能と関係者はみている。

 ただ、粒子の衝突エネルギーは当初計画の半分の2500億電子ボルトに落ちる。目的の一つである「ヒッグス粒子」を作って詳しく調べる実験は可能だが、より高いエネルギーで現れる未知の素粒子を検出できるかどうかは不透明。

 当初の実験ができなくなることで、各国の研究者の建設への期待感が薄れる懸念もある。

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 ■国際リニアコライダー(ILC) 2本の加速器を直線上に並べ、両側から放った電子と陽電子を光速近くまで加速して真ん中で衝突させる巨大実験装置。宇宙誕生時のビッグバンに匹敵するエネルギーを素粒子レベルで再現し、宇宙の根源的な成り立ちに迫る狙い。日本や米国、欧州の研究者らが国際協力で2030年ごろまでに建設する構想を進めている。候補地に岩手・宮城県の北上山地が挙がっているが、1兆円近い建設費が課題。各国の費用負担の見通しは立たず、日本政府は誘致を正式決定していない。