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九大総合研究博物館、資料・標本が散逸の危機 移転後の保存先決まらず 福岡 

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九大総合研究博物館、資料・標本が散逸の危機 移転後の保存先決まらず 福岡 

 九州大学箱崎キャンパス(福岡市東区)の総合研究博物館で保存する資料や標本が、散逸の危機にさらされている。キャンパスは平成30年度までに同市西区に移転するが、移転先で博物館の新設予定はなく、保存方法も決まっていない。数百万点に及ぶ資料には、希少なコレクションも多数含まれているだけに、関係者は強い危機感を抱く。(高瀬真由子)

 白亜紀のアンモナイトの化石や、弥生時代を中心とした3千体以上の人骨、世界的学者が収集した鉱物や、新種の基準となった昆虫の標本。九大には、各分野の第一人者が収集し、研究に使われた資料が保存されている。

 九大は100年以上の歴史をもつだけに、蓄積した資料は膨大だ。増加を続けることもあって正確な点数は分からないが、把握できているものだけで750万点に上る。これらの資料を、総合研究博物館や各学部で管理する。

 博物館は平成12年、貴重な資料を、教育などに有効活用しようと、箱崎キャンパスに設置された。資料の一元管理を目的に、データベース化を進めた。さらに「開かれた大学」を実現しようと、研究成果を地域に公開する役割も担った。

 文部科学省の意向もあり、同様の博物館は九大以外の旧帝大にも設けられている。

 博物館のある箱崎キャンパスは30年度までに伊都キャンパスへ全面移転する。

 しかし、移転に際して、博物館や収蔵資料をどうするかは白紙状態だ。関係者によると、新たな保存施設を建設するにも、費用のめどが立っていないという。

 今後、大学内の検討委員会で対応を協議する。博物館側は、全学部の共有スペースを活用し、資料の一部を保存する案などを、選択肢の1つとしている。

 博物館のある担当教授は「温度や湿度管理を必要とするデリケートな資料も多い。仮置きであったとしても、きちんと保管できる場所でなければならない。調整は難航すると思う。移転は迫っているのに、お先真っ暗だ」と打ち明けた。

 九大には、日本昆虫学会や日本古生物学会など、複数の学会や機関から、資料を適切に保存するよう求める文書が届いた。いずれも資料の学術的価値の高さを指摘し、散逸を防ぐよう要望している。

 過去には、他の博物館に資料を譲るケースもあった。適切に管理できる団体に譲渡するのは一つの手段だが、「知の蓄積」が、九州外や海外に流出する結果も招きかねない。

 鉱物の展示を手掛けてきた同大大学院助教、上原誠一郎氏(鉱物学)は「博物館には、鉱物を見学に、米国や日本各地の研究者が訪れる。資料は授業でも活用している。一度失うと二度と手に入らないものばかりで、散逸は絶対に防ぎたい」と語った。

 鉱物資料の中核は、明治から昭和期に、九大教授だった高(こう)壮吉氏が収集した。質・量ともに優れ、日本の三大鉱物標本に挙げられるという。

 学術的資料は、単に保存するだけでなく、系統立って収集・整理されているかが重要となる。今はほこりをかぶっていても、研究内容の変化によって、再評価されるケースもある。

 移転という一大プロジェクトの中で、貴重な資料を失ってはならない。