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「嚥下」機能測定をより簡単に 長野の産学官がセンサー開発へ

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「嚥下」機能測定をより簡単に 長野の産学官がセンサー開発へ

 加齢などにより食べ物をのみ込む「嚥下(えんげ)」の機能が衰えると、誤って気管に入る「誤嚥(ごえん)」につながることが知られている。そこで県工業技術総合センター(長野市)と信州大医学部(松本市)、西澤電機計器製作所(坂城町)の産学官がタッグを組み、嚥下機能を簡単に測ることができる画期的なセンサーの開発に取り組んでいる。製品化にはまだ時間を要するが、普及すれば受診時の身体への負担が大幅に軽減でき、本格化する高齢社会を迎える中、大きな朗報となる。

 ◆放射線リスク軽減

 嚥下機能の低下で一番こわいのは、誤嚥性肺炎とされる。命に関わる重篤な症状に進展しかねず、切実な問題となっている。

 信大医学部歯科口腔(こうくう)外科学教室の小山吉人歯科医師は「肺炎患者は65歳以上が9割を占める。嚥下機能を正確に評価することで予防などの対策が取れる」と期待する。

 個人の機能測定は、一般的にはレントゲンや内視鏡の画像を使い、食べ物をのみ込むところを観察する方法で行われる。このため受診者には、放射線被曝(ひばく)のリスクや身体的負担があり、これに代わる方法が求められている。

 信大などの共同開発は、物をのみ込む際、筋肉の動きを電気の流れとして捉え、センサーで計測する方法を軸に検討されている。

 県総合センター材料技術部門の大森信行研究員は「問題意識を持つ医師はもとより、高齢者のための介護食品開発を目指す食品メーカーから簡易な測定方法を求める要望があり、研究に踏み出した」と話す。

 平成26年度から通信技術を医療などに生かす総務省の助成事業の指定を受け、嚥下筋の活動測定を行うシステムを考案した。

 ◆5年後製品化目指す

 センサーは、2個1組の電極が4組装着された長方形のシートを顎から喉にかけて貼ることで、筋肉が動くときに流れる電気を測定できる。

 食べ物を口に入れてからのみ込むまでの動きは、無線通信でパソコンに送られ波形表示される。

 大森氏は「国内では音を使って測定する試みも行われているが、電位測定で機能評価する方法の開発は、世界でも私たちだけだ」と胸を張る。

 試作品の製造を担当する西澤電機の百瀬英哉・研究開発室長付技術エキスパートは「得られたデータの蓄積を重ね、3年後には食品開発のデータ解析に、5年後には医療用として製品化を目指したい」と意気込む。

 誰でも正確にシートを人体に貼れる技術開発もあり、医療機関だけでなく介護施設などでの応用も想定されている。ただ、製品化にあたっては、波形の形状と嚥下との相関関係を正確に判断できかが最大のポイントで、データを積み増し、詳細な解析を行うことが不可欠だ。大森氏も「さらに研究を進めるたい」としている。(太田浩信)