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【再生への萌芽 飯舘村避難解除1カ月】(中)子供のため…戻らない選択も

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【再生への萌芽 飯舘村避難解除1カ月】
(中)子供のため…戻らない選択も

 ■限られた進学先「当分は今の生活続ける」

 「たった2名の入学で心配だと思いますが、村にとっても大切な大切な子供。最大の愛情をかけていただけると思うので、安心してください」

 今月6日、福島県川俣町にある仮設校舎。飯舘村の菅野典雄村長は村立小学校の入学式で保護者らにこう語りかけた。草野、飯樋、臼石の3小学校は隣の川俣町の仮設校舎で授業を行っている。今年は2つの小学校にそれぞれ1人ずつ入学したが、原発事故後で最少の入学者数だった。

 村は来年度、幼・小・中が一体となった学校を整備し、村内で授業を再開する予定だ。しかし、今年度の中学校の生徒数は61人。小学校の児童数は51人で、前年度より半減。入学した児童の1人も来年、別の学校に転校するといい、村内の学校に通う子供はさらに少なくなる可能性がある。

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 「子供の選択肢が多い方がいい。そのために福島に籍を置いておきたい」

 飯舘中のPTA会長、星貴弘さん(37)はこう話す。村は、今回の避難指示解除に伴う帰村と同時の学校再開方針を示していたが、星さんは保護者の有志とともに「飯舘村の子どもの将来を考える会」を結成。放射線量への不安や転校に伴う負担が生じることなどを理由に村内での学校再開の延期を要望した。

 結局、再開は1年先延ばしされ、来年4月となった。星さんの中学2年の長男は卒業までの1年間、村の中学校に通う予定だが、「友達と離れるのが嫌だから村の学校に残ったけど、友達が転校したんですよね」と星さんは話す。

 考える会のメンバーの木幡邦彦さん(36)も息子を村内の学校に1年間通わせる予定だが、村には戻らないつもりだ。木幡さん自身は福島市から飯舘村を抜け、南相馬市の職場に1時間半かけて通勤する。

 「子供の進学を考えると福島市の方が選択肢が多い。仕事は飯舘村から通う方が近いけど、家族を優先させたい」

 福島市とは違い、飯舘村から通学できる高校は少ない。すぐに帰村するより、とどまることを選ぶのもやむを得ない。

 メンバーの一人、斉藤絵美さん(34)も「(英検などの)検定試験を無料で受けられたり、個別指導をしてくれたり、村にいたころ教育環境は最高だった。でも、高校に行くとなると別。選択肢の数が全然違う」と話す。

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 村の子供たちの保護者は学校再開延期の要望だけではなく、全村避難のために開催できなくなった夏祭りなどの行事を、保護者たちが手作りで企画し、開いてきた。避難後の6年間も、親たちは常に子供たちのことを考えてきた。

 木幡さんは言う。

 「生まれ育った飯舘村の環境が好きなので、子供が卒業したら夫婦2人で飯舘に戻ってもいいかな、と思う。でも。当分は今の生活を続ける」

 星さんも帰村については、子供が親元を離れたときに改めて考えようと思っている。

 「帰村(避難解除)は国と村が決めたこと。家庭によってそれぞれの生活があって、それぞれの帰村がある。特に子供がいる家庭は子供中心に考える。『学校が再開するから帰村する』とか『避難解除になったから帰らなくてはならない』ではなく、それぞれの家族の選択を尊重してほしい」