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九州・山口も有事への備え強化 北のミサイル発射想定し避難訓練 福岡県、6月にも実施

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九州・山口も有事への備え強化 北のミサイル発射想定し避難訓練 福岡県、6月にも実施

JR九州高速船の「ビートル」(手前)。朝鮮半島有事の際には、避難などの役割も想定される JR九州高速船の「ビートル」(手前)。朝鮮半島有事の際には、避難などの役割も想定される

 北朝鮮をめぐる情勢が緊迫度を高める中、自治体や企業も有事に備えて動き出した。福岡県は6月初めにも、県東部の吉富町で、弾道ミサイル発射を想定した初の住民避難訓練を実施する。九州・山口は朝鮮半島から近いだけに、官民挙げた取り組みが欠かせない。 (九州総局 村上智博)

 「北朝鮮がミサイルを発射する可能性は、ゼロではない。住民の避難訓練に協力してほしい」

 今月24日、福岡県の危機管理担当者が吉富町役場に電話をかけた。

 県は5月28日、同町で自然災害を想定した1300人規模の防災訓練を実施する。住民の防災意識が高まった状態で、ミサイル想定の避難訓練を行えば、より効果的だと県は判断した。

 ミサイル発射を想定した訓練は、平日に実施する。

 全国瞬時警報システム(Jアラート)を使った、迅速な情報伝達を確認する。町は防災行政無線などで町民にアナウンスし、住民は学校施設などに避難するという流れになる。

 訓練では、北朝鮮が保有する生物・化学兵器も念頭に置く。屋内避難後に、換気扇を止めて窓を閉め、目張りで密閉するといった対応を取るという。

 ミサイル発射を想定した住民参加型の避難訓練は今年3月、全国で初めて、秋田県男鹿市で実施された。九州・山口では長崎県が今夏に実施する。

 九州は朝鮮半島に近い。北朝鮮のミサイル基地「東倉里(トンチャンリ)」から福岡市までは約850キロで、中距離弾道ミサイル「ノドン」の射程1300キロに入る。

 「九州・山口は朝鮮半島有事の矢面に立つ。国が主導し、複数県で広域的に訓練すべきだ」(元自衛官)との声もある。

 福岡市の高島宗一郎市長は14日、首相官邸に萩生田光一官房副長官を訪ね「国にはいろんなシナリオを作ってもらい、自治体がどんな状況でどう対処すべきか方針を示してほしい」と求めた。萩生田氏は「そうですね」とうなずいた。

 万が一の想定だが、戦争は究極の危機管理だ。政府と自治体は役割分担し、国民の生命と財産を守らなければならない。

 政府は21日、内閣官房の国民保護ポータルサイトに、ミサイル攻撃があった場合の、詳しい避難方法などを掲載した。

 各自治体は備えを強化する。

 米軍と海上自衛隊の基地がある山口県岩国市は21日、Jアラートの機器を緊急点検した。

 熊本県は24日、24時間態勢で情報収集にあたる職員を、1人から3人に増やした。危機管理担当の幹部は午前5時に出勤する。

 県幹部は「ミサイルが着弾すれば、最初の30分の対応が重要だ。うまくできなければ、後の対応に響く。自衛隊が必ず救援に来るともかぎらない」と語った。

 ■「船を出す」

 有事となれば、韓国にいる日本人の救助や、難民対応も想定される。

 博多港と韓国・釜山を結ぶJR九州高速船(福岡市博多区)は、社内で有事の際の手引書を再確認した。

 北朝鮮が韓国を攻撃した場合、在留邦人の退避は、釜山などからの船舶利用が想定されるからだ。

 JR九州高速船の幹部は「朝鮮戦争はあくまで、休戦状態にあるとの認識でいる。政府から要請があれば、船は出す」と明かした。

 「自治体などの対応には限界もあるだろう。手遅れにならないように、それぞれが役割に応じ、時間を追って対処策を決めるタイムラインを定めておくべきだ」

 九州のある自治体の危機管理担当幹部は、こう指摘した。