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きょう熊本地震から1年 二重被災の“ママ防災士”講演活動

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きょう熊本地震から1年 二重被災の“ママ防災士”講演活動

 東日本大震災と熊本地震を経験した女性が熊本県で防災士として講演活動に取り組んでいる。同県和水(なごみ)町の柳原志保さん(44)。宮城県多賀城市に在住時、東日本大震災に遭い、移住先の熊本でも地震を味わった。14日で熊本地震から1年。「二重被災の体験を生かし、防災の心構えを現地の人に伝えたい」と意気込んでいる。 (伊藤寿行)

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 柳原さんは震災時、仙台市のビジネスホテルの支配人をしていた。多賀城市の自宅も大規模半壊の被害を受けたが、幼い2人の息子を預け、職場に寝泊まりして復旧に当たった。

 営業が再開し、軌道に乗った頃、「子供との時間を増やしたい」と思うようになり、震災1年後の平成24年4月、妹家族の暮らす和水町に親子で移り住んだ。

 震災の教訓を熊本県民に伝えたいと、26年に防災士の資格を取り、講演活動を本格化させた。

 「熊本で天災といえば風水害のことを指す。受講者に地震と津波の猛威を話しても、『ここで地震は起きないから』と聞く耳を持ってもらえず、最初は空回りしていた」

 だが、移住から4年後、熊本地震が発生。和水町は震度6弱を観測した。自分は備えができていて被害を最小限に食い止めたが、現地の住民は住居の損壊、家具の転倒などの被害に遭った。人的被害も関連死を含めて全県で200人を超す死者が出ている。

 「あなたの言っていたことがようやく分かった」。地震後、柳原さんに対する現地の人の受け止め方は変わり、真剣に耳を傾けるようになったという。熊本地震前は4年間で50回だった講演も、地震後は1年で100回を数えた。

 柳原さんは「ママ防災士」を名乗る。「車のガソリンは半分になったら給油して常に満タンを心掛けましょう」「倒れた家に閉じ込められても助けを呼べるよう笛を携帯しましょう」。日常生活の延長でできる防災を説く。

 熊本地震の被災者を励まそうと、多賀城市の高齢者グループが木製のクマのマスコットを作り、柳原さんを通じて贈った。古里と今の生活拠点の被災者同士のつながりも深まっている。

 柳原さんは「二重被災は運命だと思う。震災を『人ごと』でなく『わがごと』と受け止めてもらうのは難しいが、犠牲者を1人でも少なくするために経験を伝えたい」と話している。