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【ZOOM東北】岩手発 水揚げ量日本一「宮古の真鱈」 地場産品で復興後押し

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【ZOOM東北】
岩手発 水揚げ量日本一「宮古の真鱈」 地場産品で復興後押し

 マダラの水揚げ量が6年連続で日本一という港がある。東日本大震災で大きな被害を受けた宮古港(岩手県宮古市)だ。震災からまもなく6年、「宮古の真鱈(まだら)」を復興を後押しする地場産品に育てようという動きが広がっている。(石田征広)

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 「宮古の真鱈」は鮮度の良さで知られている。その理由の一つは漁獲から出荷までの時間が短いことだ。

 マダラは底引き網とはえ縄で漁獲される。宮古市魚市場で入札するマダラの7割を水揚げする底引き網漁船が出港するのは午前2~3時ごろ。宮古港での水揚げは午後1時ごろから始まる。この間、12時間足らず。入札に間に合えば、県外にもその日のうちに出荷できる。

 もう一つの理由は徹底した品質の保持だ。マダラは鮮度が落ちるのが早いため、漁獲後の船上から直接水揚げして入札、業者に引き渡す。低温管理も徹底する。震災後はさらなる品質向上を目指して、漁獲したマダラを船上で活け締めにし、血抜きをしてから水揚げするという取り組みも一部で始まっている。

 ◆鮮度保ち首都圏へ

 鮮度の良さはこれまで以上に大きな強みになりそうだ。入札したマダラの出荷先は5割が首都圏だが、震災の復興道路として三陸沿岸を南北に走る三陸沿岸道や宮古市と盛岡市を東西に結ぶ国道106号、三陸沿岸の釜石市と内陸の花巻市を東西に結ぶ釜石道の整備が急ピッチで進んでいるためだ。しかも、いずれも高規格の自動車専用道(国道106号の一部は一般国道)でほとんどの通行料が無料だ。

 これを利用して、県とヤマト運輸は新鮮な三陸の海産物を宮古市田老地区から三陸道経由で仙台市に直送するトラック定期便の試験運行を今月13日から始めた。現状では“ぶつ切り”の三陸道が全線開通すれば、所要時間は現在の6時間半から3時間に短縮。首都圏がぐんと近くなるというわけだ。

 「宮古の真鱈は地元で刺し身で食べられるほど、鮮度が良い」と話すのは宮古市魚市場の大沢春輝参事。発泡スチロール製の箱に入れて出荷することから「箱タラ」とも言われ、これには中に敷く氷も必要だ。そうした意味で関連産業の裾野は広く、「復興の後押しになってくれると期待している」(大沢氏)という。

 ◆ブランドが雇用生む

 「宮古の真鱈」のブランド化に取り組んでいる会社もある。鮮魚出荷と水産加工を手がける「トクエ」(徳江信春社長)だ。同社は震災で事務所や作業場を失ったが、その後再建。午後に水揚げされたマダラを三枚におろして切り身にする機械を導入した。

 1時間に1200匹も処理できるすぐれもので、その日のうちに出荷が可能となった。「宮古港日戻りマダラフィレー」の名で商標登録を目指す。「製品に商標と製造時間をつけて差別化を図り、産地間競争を勝ち抜きたい。それが新しい雇用を生み、復興につながる」と徳江社長は言う。

 ◆名物料理の開発を

 課題は、マダラの品質をアピールする名物料理が少ないことだ。市内の景勝地にある「浄土ケ浜レストハウス」では今月、地元の観光団体による市内7つの主な宿泊施設の料理担当者向けのマダラ料理の試食会が開かれた。

 「東京から料理人を招き、豆乳しゃぶしゃぶやユリ根和えなど19の料理が出た。名物料理が一つでも根付けば…」。宮古観光文化交流協会の山口惣一事務局長はこう期待を寄せる。

 地元で鮮魚を扱う「丸友しまか」(島香尚社長)が開発した、冷凍真空パックをレンジで温める新感覚の「タラバターオリーブオイル」のような加工品もあるが、地元ならではの商品は少ない。今後の取り組みに注目が集まる。