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【師道を志して 矢ヶ部大輔の一筆両断】「教育の情報化」が抱える課題

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【師道を志して 矢ヶ部大輔の一筆両断】
「教育の情報化」が抱える課題

 昨年7月29日、文部科学相は「教育の情報化加速度プラン副題~ICTを活用した『次世代の学校・地域』の創生~」を策定・公表しました。合わせて文科省は、ICT(情報通信技術)を効果的に活用するための、今後5年間の行動計画を示しています。いずれも、未来社会を見据えて育成すべき資質・能力を育むための新たな「学び」や、それを実現する「学びの場」を形成することを目標としています。

 詳細は省略しますが、具体的には、実証研究「スマートスクール」(仮称)を平成29年度より実施・検討するということです。統合型校務支援システムの普及促進や、授業・学習面と校務面のICT活用を連携し、データに基づく学級・学校経営を実現しようというものです。

 統合型校務支援システムというのは、児童生徒の成績処理や健康管理、学籍関係や学校事務などを統合し、教職員が一律に利用できるシステムのことです。

 教育の質的向上や、業務効率化による負担軽減につながればよいのですが、変革に不安を覚える教職員も多いと思います。

 教育の情報化については昭和60年の臨教審第一次答申においてその重要性が指摘されました。以来、情報教育の重要性と、ICT環境の条件整備の必要性が指摘されてきました。国際競争力を高めるための「国家戦略」としての位置付けですが、目標に追いついていないというのが現状だと思います。

 情報化と言えばパソコンやタブレットを思い浮かべるところですが、文科省は教育の情報化が目指すものとして、3つの面を通じた教育の質の向上を提起しています。平成23年の「教育の情報化ビジョン」から、挙げてみましょう。

 (1)情報教育(子供たちの情報活用能力の育成)

 (2)教科指導における情報通信技術の活用(情報通信技術を効果的に活用した、分かりやすく、深まる授業の実現など)

 (3)校務の情報化(情報共有による、きめ細かな指導や、校務の負担軽減等)

 それぞれの課題を整理します。(1)に関しては、専門性を持った教員の確保が課題となると思います。

 情報教育では「情報活用の実践力」「情報の科学的理解」「情報社会に参画する態度」の3つの観点が示されています。高校には平成15年度に「情報」が導入されました。昨年末の中教審答申によると、次期学習指導要領において小学校段階で情報技術を活用する力やプログラミング的思考の育成を求めています。プログラミング思考というのは論理的思考力や創造性、問題解決能力といった資質・能力を育む側面があるとのことです。

 また、高校では共通必履修科目として、情報技術を適切かつ効果的に活用する力をすべての生徒に育む「情報I」を設定することとしており、小中高の一貫した情報教育を目指すことになるのだと思います。新しい大学入試制度では、「情報」に関する出題科目を設定される可能性もあります。

 (2)についてはアクティブ・ラーニングの視点に基づく「主体的・対話的で深い学び」の実現のために、ICTを取り入れた実践例も積み重ねられつつあります。課題は一層の環境改善です。また、昨年のPISA(学習到達度調査)の結果で読解力の順位低下が指摘されていますが、教師はICT活用と、本質的な学力との関連について常に検証することが必要だと考えます。

 (3)については、校務の情報化が、実際に負担軽減につながっているのかが課題です。先に述べた統合型校務支援システムに期待したいところですが、自治体によっては学校の担当者が独自でシステムを開発しているのが現状です。特定の教員に多大な負担がかかります。情報セキュリティ対策を含め予算措置が追いついていないところが課題なのだと思います。

 いずれにせよ教師側は教育の本質を見極め、新たな情報技術の導入との間で、その整合性を検証していく姿勢がますます求められるのではないでしょうか。

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【プロフィル】矢ヶ部大輔

 やかべ・だいすけ 昭和43年福岡県柳川市生まれ。福岡県立伝習館高校、広島大学文学部卒。平成3年度から福岡県立高校英語科教諭。三池高校、伝習館高校などで勤務。24年度から福岡教育連盟執行委員長。