産経ニュース

下関市長選 「潮目が変わった」 安倍首相、前田氏を全面支援 山口

地方 地方

記事詳細

更新


下関市長選 「潮目が変わった」 安倍首相、前田氏を全面支援 山口

 山口県下関市長選(3月5日告示、12日投開票)の風向きが、変わってきた。3選を目指す現職の中尾友昭氏(67)に、元市議の前田晋太郎氏(40)が挑む保守分裂の構図で、当初は現職有利とみられていた。ところが、安倍晋三首相が、前田氏支援の姿勢を明確にしたことで、中尾氏の支援者の一部に、前田氏へ“保険”をかける動きが出てきた。 (大森貴弘)

 今月9日。下関市内で新年恒例の安倍首相の「新春のつどい」が開かれた。約3千人の支援者を前に、サプライズゲストとして檀上に登場したのが前田氏だった。前田氏は、7年半にわたって安倍首相の秘書を務めた。

 「世界で活躍される安倍首相の地元にふさわしく、日本一輝く下関を目指したい!」

 訴えを終えると、前田氏は首相とがっちり握手を交わした。

 客席の最前列で、中尾氏がこの様子を眺めていた。その表情はこわばっていた。中尾氏は来賓として、前田氏の前に、こんなあいさつをしていたのだ。

 「安倍首相のご理解をいただいて(市政を)2期8年、担ってきた。3期目も首相と皆様のご理解をいただいて頑張りたい」

 その直後の安倍首相と前田氏の握手だ。大勢の支援者の面前で、首相が中尾氏に「ノー」を突きつけたに等しかった。

 「あの握手で潮目が変わった。首相がここまでしてくれたのだから、絶対に負けられない」。前田晋太郎後援会の小原龍男事務局長は、こう語った。

                 × × ×

 下関市の保守層は、安倍支持者と、林芳正元農水相の支持者に色分けされる。

 中尾氏は林氏に近いと目される。とはいえ過去の市長選では、安倍首相の後援会の中で、中尾氏を支援する動きもあった。

 敵味方が入り交じる中で昨年12月、自民党下関支部が前田氏推薦を決定した。これに自民党市議団は反発した。

 「複数の保守系候補が出馬する中、遺恨が残り混乱を招く恐れがある。市政の安定運営のため、自主投票を決定した」

 市議団はこんな文書を報道各社に配布した。市議として、現職の中尾氏を支援しようという雰囲気も濃厚だった。

 だが、空気は一変した。

 首相は昨年12月末、電話で前田氏に「現職の批判はしないこと。自分の公約をはっきりと力強く演説で訴えなさい」と伝えたという。

 こうした首相の“本気度”に、中尾氏の支持層も揺らぐ。

 地元の政界関係者によると、これまで中尾氏を支援してきた議員や企業経営者から、「今回は前田でいく」との声が漏れ始めたという。前田陣営への協力打診の動きも出ている。

 選挙後を見据え、前田氏へも「保険」をかけ始めたといえる。

                 × × ×

 逆風が吹く中尾氏は、支持拡大へ懸命にボルテージを上げる。

 市長選では、老朽化が目立つ市役所本館の扱いが大きな争点となりそうだ。

 前田氏は現庁舎を取り壊して、跡地にミニ庁舎とバスセンターなどを設けると主張する。これに中尾氏は25億円かけて耐震補強をした上で、継続使用する方針を打ち出す。

 今月15日、下関市内で開催された林氏の「新春の集い」で、中尾氏は訴えた。

 「耐震化すれば50年使える。建て替えて小さくするとは、とんでもない話だ。市役所の試算で45億円もかかる。そんな無駄なことをするより、もっと市政を前へ進めましょう。4年に1回、勝負の年だ。みなさん、再び中尾友昭、よろしくお願いします!」

 早くも決起集会のように、熱のこもった演説だった。

 市長選では、どちらがより明確に、下関の将来像を示せるかが問われる。元市議の松村正剛氏(63)も出馬を表明している。