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【ZOOM東北 青森発】鳥インフル収束 訓練成果発揮も… 備蓄や指揮系統に課題

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【ZOOM東北 青森発】
鳥インフル収束 訓練成果発揮も… 備蓄や指揮系統に課題

 青森市の2農場の食用アヒルが昨年11月と12月に相次いで高病原性鳥インフルエンザに感染した問題は、発生から約1カ月後の先月27日に収束した。「早期の収束が図られた」(三村申吾知事)背景には、定期的に机上、実動演習などの訓練を行っていることがある。一方で、大規模発生に備えた資材の確保や現場の指揮系統の明確化といった課題も浮かび上がった。(福田徳行)

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 県内で初の家禽(かきん)からの高病原性鳥インフルエンザ発生に県は延べ1210人の職員を動員、約2万3千羽を殺処分し、ウイルスの封じ込めに成功した。4日の年頭会見で三村知事は「発生農場からの早期通報や消毒ポイントの設置、埋却地の選定などの初動対応、訓練が早期完遂につながった」と語った。

 ◆時間との戦い

 県は家禽での高病原性鳥インフルエンザの発生に備え年2回、庁内の連絡訓練のほか、実際に防護服を着て発生現場に見立てた屋外にテントを張り、生きた鶏を使って殺処分するための捕獲といった実動演習を行っている。ただ、ウイルスの拡散を防ぐため、国の防疫指針で24時間以内に殺処分、72時間以内に埋却処分という目安があり、まさに時間との戦いでもある。

 中野晋県畜産課長は「動員された職員は全員、時間通りに集合した。普段、訓練していることが職員の意識、行動につながったのではないか」と指摘する。

 一方で、資材に関して県は10万羽以上を飼育する大規模農場での発生の初動対応に備え、必要な防護服を2日分備蓄しているが、今回は殺処分するためのポリバケツが破損したり、埋却のためのブルーシートが不足した。さらに、現場の指揮系統が思うように機能せず、作業手順や進行管理に手間取ったことで職員が待機を余儀なくされるなど、現場が混乱した部分もあったという。

 訓練を重ねているとはいえ、実際の現場では想定外のケースが出てくることが十分に予想され、中野課長は「現場の指示体制と本庁への連絡など、今回の経験を踏まえて今後の対応を検討したい」と話す。

 「ついに(鳥インフルエンザが)出てしまったかという思い。暴れるアヒルを見るのはつらかったが、仕事と割り切った」。殺処分に当たった40代の男性職員は複雑な心境を吐露した。

 県は今回、班を組んで部局横断的に職員を動員。この男性職員は1例目の発生直後の11月29日午前2時ごろに農場に到着し、アヒルを畜舎入り口に追い込む作業に従事した。「元気なアヒルを強制的に追い込むのはつらいが、殺処分は拡大防止のための使命感と割り切るしかなかった。今後、発生しないことを祈るだけ」と沈痛な表情で語った。

 発生農場では今後、ウイルスの有無確認やモニター家禽を使った検査などが必要で、「経営再開には半年以上かかると見込まれ、できるだけ前倒しできるよう支援していく」(同課)。このため、県は県議会とともに今回、被害を受けた農場の経営安定対策を国に要請している。

 ◆全国有数の畜産県

 平成27年の青森県の農業産出額は3068億円と東北ではトップで、このうち畜産関係は910億円と年々増え、全国有数の畜産県だ。県によると、現在までに今回の鳥インフルエンザによる風評被害の報告はなく、「畜産に対する影響も最小限に食い止められた」(中野課長)。

 ただ、野鳥が相次いで感染するなど、依然として発生リスクが高い状況に変わりはない。県内では100羽以上を飼育する家禽農場は176カ所あり、三村知事は「今後も警戒を強め、野生動物の侵入防止対策などを徹底していく」と発生防止対策に万全を期す考えを示した。