産経ニュース

【日本の源流を訪ねて】天真名井(福岡県宗像市)

地方 地方

記事詳細

更新

【日本の源流を訪ねて】
天真名井(福岡県宗像市)

祠に囲まれた「天真名井」と、その横を流れる「天ノ川」 祠に囲まれた「天真名井」と、その横を流れる「天ノ川」

 ■七夕伝説「天ノ川」に注ぐ湧き水

 九州本土から約10キロ離れた福岡県宗像市の大島に、長い歴史と伝説に彩られた湧き水「天真名井(あめのまない)」がある。島には宗像大社の「中津(なかつ)宮」が鎮座する。

 日本神話で、天照大神が十束剣(とつかのつるぎ)を3つに割り、天真名井の水と一緒に口に含んでかみ砕いたところ、そこから田心姫神(たごりひめのかみ)、湍津姫神(たぎつひめのかみ)、市杵島姫神(いちきしまひめのかみ)の3柱の女神が生まれた。いずれも宗像大社の祭神だ。

 今、湧き水があるのは、宗像大社の「中津宮」の境内だ。木々がうっそうと茂り日中でも薄暗い。近くに島の最高峰、御嶽山(224メートル)を源とする「天ノ川」がある。天真名井から湧き出た水も、この川に流れ込む。

 口に含むと、ほのかに甘みを感じる。地元では、長寿に効能があるとされる。

 中津宮と天ノ川は、日本における「七夕伝説発祥の地」として知られる。

 川を挟んだ丘に、織女神社と牽牛神社が鎮座する。2つの神社はあわせて「星の宮」とも呼ばれる。

 七夕はもともと、中国から伝わった。「天の川」の両岸に引き裂かれた牽牛と織女が、年に一度、7月7日の夜にだけ会うことを許された、おなじみの伝説だ。

 大島に残る伝説では、唐に派遣された若者が、機織りを仕事とする女性「織女」を大陸から連れ帰り、恋に落ちた。しかし、若者は帰国後、都に戻り、織女と離ればなれになった。

 若者はある日、夢枕で「大島の宗像大社中津宮に行くように」とのお告げを受けた。早速、大島に向かい、天ノ川でみそぎをしていたところ、桶(おけ)の水に織女が映っていた。若者は水鏡の中で、織女との逢瀬を重ねたという。

 大島は古来、大陸と九州を結ぶ海路にあたった。人と文化が交流するなかで、七夕伝説も流れ着いたのだろう。

 この伝説に基づいた神事は室町時代に記された「正平年中行事」でも紹介された。大島の織女神社と牽牛神社に参拝し、水に映る姿によって男女の縁を見定めたという。

 現在も、大島では旧暦の7月7日に近い8月7日に、盛大な七夕祭りが開かれる。境内の竹には、数多くの短冊が結びつけられる。島内外から多くの人が集まる行事だ。

 平成23年には、赤く発光する液体を透明なチューブに流し、“赤い糸”に見立てて、星の宮を結ぶ「赤い糸プロジェクト」もあった。織女と牽牛が結ばれる様子に、会場は大きく沸いたという。 (九州総局 中村雅和) 

                   ◇

 ■天真名井 福岡県宗像市大島1811、宗像大社中津宮境内。JR鹿児島線、東郷駅からバス「神湊波止場」で下車後、島まで船で15~25分。大島港の渡船ターミナルから徒歩約10分。問い合わせは宗像大社(電)0940・62・1311。