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学習と柔道「文武両道」指導 私語奨励、音楽…楽しい道場目指す 和歌山

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学習と柔道「文武両道」指導 私語奨励、音楽…楽しい道場目指す 和歌山

 畳の上にずらっと並んだ勉強机。熱心に英語や数学などの教材とにらめっこする20人ほどの小中高生たち。学習と柔道の文字通りの「文武両道」を指導する和歌山市郊外の町道場「柔道学習塾 紀柔館」では、練習前、柔道場とは思えない光景が広がる。代表の腹巻宏一さん(52)の斬新な指導や、その道場の明るく楽しそうな雰囲気が今、注目を集めている。

 「先生、これを教えてください」。積極的に質問し勉強に励むのは主将を務める栗林優斗さん(15)。「勉強は最初嫌いだったけど、優しい先生やみんながいる道場でやるから楽しくなった。でもやっぱり柔道の方が好き」とはにかんだ。

 勉強開始から2時間後。助手で妻の牧さん(43)が「はい、片付けして!」と声を掛けると、皆一斉に机を片付け、柔道着に着替える。「先生に礼!」。栗林さんの号令で練習が始まる。互いに組み、技を掛け合う顔は真剣だが、みな楽しげだ。

 腹巻さんが道場を開いたのは筑波大を出た平成2年。「文武の日本代表」を育成しようと、学習と柔道の指導を始めた。当初はしばしば怒鳴りつけるなど厳しく接していた。転機は24年、大阪市立桜宮高のバスケットボール部主将が体罰を苦に自殺した事件。減り続ける柔道人口も再考のきっかけとなった。

 「今の時代、厳しい指導は有効ではないのかもしれない」。今では、目先の試合に勝つことより、数十年後にそれぞれのコミュニティーで輝く存在になることこそが重要と考えるようになった。塾生自身に練習や学習内容を決めさせるなどそれぞれの自主性を重んじる。あえて練習中の私語を奨励したり、明るい音楽を流したりと「柔道は楽しい」と思える道場を目指している。

 腹巻さんは、道場の外でもさまざまな企画を進めている。昨年末には、女性を集めてお茶やダンスをして楽しむという柔道教室を実施。今は、高齢者向けに柔道や合気道の考えをもとにした「転び方」の講座を計画中だ。腹巻さんは「時代によって考えは変わる。『柔道』の考えも変わっていい。こうした試みが新しい柔道のあり方の一つの参考になってくれれば」と語った。