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西日本FH、10枚羽に込めた思いは…あす持ち株会社化で荒波に船出

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西日本FH、10枚羽に込めた思いは…あす持ち株会社化で荒波に船出

西日本フィナンシャルホールディングスのロゴマークを発表する西日本シティ銀行の谷川浩道頭取 西日本フィナンシャルホールディングスのロゴマークを発表する西日本シティ銀行の谷川浩道頭取

 西日本シティ銀行は3日、西日本フィナンシャルホールディングス(FH)を発足し、持ち株会社態勢に移行する。日銀によるマイナス金利政策、金融庁の銀行再編への圧力など、地方銀行を取り巻く環境は荒波が続く。西日本FHは持ち株会社化によって、激変の時代における生き残りと成長を目指す。(九州総局 中村雅和)

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 「経営統合で、(10社まで)数を増やすというのは深読みですよ」

 9月9日午後、西日本シティ銀行の谷川浩道頭取は苦笑混じりに、こう語った。

 記者会見で西日本FHの新しいロゴマークを披露した。太陽を中心に放射状に10枚の羽が伸びる形で未来を表現した。だが、西日本FHにぶら下がる子会社は、西日本シティ銀行をはじめ7社しかない。

 「あと3社、持ち株会社にぶら下げることを意識しているのではないか」。こんな質問が出たのだった。

 全国的に地銀の再編・統合が進む。

 谷川氏もこれまで「将来的な可能性は否定できない」と含みを持たせてきた。「深読み」との発言を額面通りに受け取る向きは少ない。

 九州のある地銀幹部は「ここ十年ほど続いた九州の銀行間の『国盗り合戦』は最終段階だ。指をくわえてみているだけの経営者がいるはずがない。(西日本FHの)10枚の羽は意味深長だ」と語った。

 持ち株会社形式での再編は、金融機関では主流だ。

 九州・山口の金融持ち株会社をみると、すでに誕生している山口フィナンシャルグループ(FG)、ふくおかFG、九州FGは、いずれも統合・再編を機に持ち株会社となった。

 さらに、5月に成立した銀行法改正も後押しする。

 そこでは持ち株会社化によって、金融グループ内のシステム管理や資産運用などの業務集約や、資金融通を可能とする規制緩和が進んだ。再編効果が出やすくなる。

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 再編機運が高まるのは、銀行経営の根幹が揺らいでいるからだ。

 銀行の伝統的なビジネスモデルでは、多くの人から集めた預金を元に、企業・個人に資金を貸し出し、利子で稼ぐ。

 長期的な金利低下傾向が、このビジネスモデルをむしばんでいる。

 谷川氏は「他行の攻勢を受けて、防衛的に金利を下げざるを得ないケースがある。本来あってはならない『金利のたたき合い』になっている」とこぼす。

 超低金利政策の結果、貸出金利や有価証券の運用利回りから、預金利回りを引いた「総資金利ざや」は落ち込みが続く。

 東京商工リサーチのまとめでは、平成27年3月期決算で、全国114行のうち、6割の71行で利ざやが前年度より減少した。利ざやがマイナスになる「逆ざや」も11行あった。

 各銀行は貸出金の全体量を増やすことで、利回りの低下を補おうとした。それもマイナス金利政策の影響で崩れた。今後の人口減少を考慮すれば、地銀の経営はさらに難しくなる。

 金融不安は地域経済そのものに、大打撃を与える。

 そこで金融庁は全国の地銀に、再編による規模拡大や独自の事業モデル導入など、持続可能な経営戦略の検討を促す。簡単に言えば、「つぶれないように合併して経営基盤を強化しろ」という圧力だ。

 来年4月をめどとする、ふくおかFGと十八銀行の経営統合も、この流れにある。

 ある財務省幹部は「金融庁は再編志向を強めることがあっても、弱めることはないだろう。全国的にさらなる統合は不可避だ」と語った。九州でいえば大分や宮崎、佐賀の3県の地銀はこれまで、再編の蚊帳の外だった。こうした地域にも今後、再編の波が押し寄せる。

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 新たに誕生する西日本FHは、地銀再編の動きをにらみながら、生き残りを賭けて、九州・山口を飛び越えた地銀連携も進める。

 すでに横浜銀行をはじめ全国の有力地銀と、新たな営業手法の開発や、海外拠点の共通利用、資産の合同運用に取り組んでいる。

 谷川氏は「シマウマは、先頭集団に入っていなければ、後からやってくるライオンに食べられてしまう。さまざまな分野で、その先頭集団に入っていなければならない」と強調する。

 ある西日本シティ銀行OBは語った。

 「ICT(情報通信技術)の発達で、銀行業務は従来のように地域にとらわれるものではなくなった。全国的な連合体の中心になり、勝ち残る銀行になってもらいたい」