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【みちのく会社訪問】ツリーワーク(青森県中泊町)

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【みちのく会社訪問】
ツリーワーク(青森県中泊町)

 ■廃棄物で堆肥、リサイクルに貢献

 貝のカルシウムと炭の力で植物の成長をサポートする画期的な堆肥の開発に成功した。ホタテの養殖資材に付着する残渣(ざんさ)やリンゴの搾りかす、糞尿(ふんにょう)、木炭、木酢(もくさく)液などを活用することで、リサイクル率で全国下位に低迷する青森県にあって廃棄物の有効利用や、地域活性化に関係者の期待が高まっている。

 陸奥湾の海水温上昇に伴い、ホタテの養殖資材に付着する「キヌマトイガイ」が増加傾向にあり、漁業者にとっては処理が大きな負担となっている。漁業者や県などからこの残渣を使った堆肥製造の要望を受け、平成19年から木炭混合堆肥の製造販売を手掛けている代表社員の佐々木嘉幸さん(78)が東京大や弘前大などの技術提供を受けながら、キヌマトイガイの堆肥化に取り組んできた。

 本業が炭の活用だけに、弘前大の教授と相談しながら「塩分とカドミウムがなければ堆肥になる。キヌマトイガイを分析検査した結果、何とかなると確信した」と佐々木さん。

 ◆試行錯誤重ね商品化

 昨年、平内町と外ケ浜町の両漁協からキヌマトイガイを3千トン、津軽地方の農協からリンゴの搾りかすを2500トン、野菜の加工残渣や家畜の糞尿、もみ殻、樹皮計1600トンを購入。東京大の教授からキヌマトイガイが木酢液に溶けることを聞き、試行錯誤を重ねながら、自社の木炭と木酢液を混ぜた県産素材100%の「カル炭α堆肥」を商品化した。

 商品はすべて自然由来の素材だけに環境にも優しい。県内のリンゴ園ではカルシウム不足による樹木の生育障害や根が菌に侵されて枯死する「紋羽(もんぱ)病」が、水田や畑では生育不足が懸念されており、リンゴ業界や稲作農家などにとっては、まさに“救世主”となりそうだ。県りんご協会は「肥沃(ひよく)な土づくりに期待が持てる」と話す。さらに、貝の残渣の処理に困っている陸奥湾のホタテ産業振興を側面から支える存在となる。

 農林水産、商工、大学、行政といった産学官が連携し、廃棄物の資源化に成功したことについて、佐々木さんは「発想の転換が必要。リサイクルの推進と地球温暖化防止に少しでも貢献したい」と意気込む。

 中泊町内の自らの水田では、農薬を一切使わないコメの栽培に取り組んでいる。木炭で水を浄化し、害虫防除に木酢液を散布、米ぬかで雑草の発生を抑制するなど徹底した無農薬栽培。「うちのコメはおいしいよ」と笑う。

 ◆次は生薬栽培に生かす

 さらに、佐々木さんは次の事業展開を描く。

 秋田県八峰町の生薬栽培の実験畑を見学し、木酢液を生薬栽培に生かすための検討に着手。「無農薬・化学肥料を一切使わない栽培方法を展開してきた弊社の事業にふさわしい」と確信した。今後、生薬業界と連携しながら起業の可能性を模索する。事業の拡大に伴い、地元の高校生の採用など雇用創出にも意欲的だ。

 「リサイクルは環境にとって大きな課題」。炭に関する専門知識を生かし、循環型社会形成の一翼を担う並々ならぬ決意が垣間見えた。(福田徳行)

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 【取材後記】青森県の基幹産業であるリンゴ栽培とホタテの養殖。生産者にとっては処理に困る厄介者に目を付け、産業振興を後押しするとともに、地球環境にも貢献しようとしていることに感銘を受けた。何より、佐々木さん自らが先頭に立って、事業を通して町を元気にしたいとの思いが言葉の端々に伝わってきた。これからも幅広い人脈を生かして、画期的な商品開発に取り組んでほしいと思う。

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 【企業データ】青森県中泊町中里亀山602。木炭や木酢液の高度利用を目的に平成19年7月に設立。社名は弘前大教授の発案で、ツリーとワークで「木が働く」会社という意味が込められているという。資本金500万円。従業員8人。木質炭化学会や東北森林科学会、日本木酢液協会などに加入。「カル炭α堆肥」の希望小売価格は1袋(10キロ)で700円。問い合わせは(電)0173・57・9003。