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【みちのく会社訪問】伝農アシスト(八戸市) 農業技能伝承の一助に

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【みちのく会社訪問】
伝農アシスト(八戸市) 農業技能伝承の一助に

 少子高齢化や後継者不足、市場のグローバル化など、農業を取り巻く情勢が厳しさを増す中、IT(情報技術)を使って生産性、収益性の向上をサポートする。佐藤正一社長(57)は「先人から培われた農業の技能伝承を通して担い手育成の一助になれば」と意気込む。

 ◆何か地域のために

 実家が宮城県角田市のコメ農家という佐藤社長は、東北の基幹産業である農業を活性化するために、担い手不足や環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)による国際的な市場変化に対応した対策が不可欠と考えていた。

 「何か地域のためにできないか」と考え、母校の八戸工業大と連携。農家や農業関連メーカーなどが連携した会員制交流サイト(SNS)を取り入れた農業支援ツール「伝農ネット3A」を構築した。

 支援ツールの一つが「音声de作業日誌」。農作業の際に小型マイクを身に付け、何か気付いた時に話しかけるだけでスマートフォンに送信・録音され、農作業日誌を作成する仕組みだ。手を休めることなく日誌を作ることができるとともに、作業の内容確認や今後の作業計画、作物や気象データの分析、トレーサビリティー(履歴管理)にも役立つ。佐藤社長は「帰宅して日誌を書くストレスから解放され、その日やったことを見直すこともできる」とメリットを強調する。

 一方で、農作業日誌のソフトを使っている人やスマホを持たない高齢者なども数多い。佐藤社長は「使い勝手の良さを追求するのはもちろん、今後は音声に画像や位置情報などを取り入れながら、農業以外でも活用できるようにしていきたい」と話す。

 一番の狙いは、農業機械が進歩する中にあっても、地域や環境に合わせてこれまで培ってきた「人の技術」のノウハウを次世代に継承し、「Iターン」「Uターン」によって農業を始めたいという人がITを活用することで農業の魅力や奥深さに触れ、結果的に生産性や収益性の向上につなげることにある。

 「これから農業に従事しようという人を育てたい。作物は収穫が年1回。収益を上げることもアシストしたい」と佐藤社長。社名には農業技術を伝承し、側面からサポートしたいという願いが込められている。

 このほか、無農薬農家やアレルギー疾患で悩んでいる人たちを支援するため、SNSを使って情報提供するとともに無農薬、無化学、自然栽培食品を販売・提案する事業やモノづくりを支援する事業などにも取り組んでいる。

 ◆後継者不足の解消

 「青森県の農家の担い手不足の解消と、丹精込めて作った農作物の販売を目に見える形で支援することで農家に笑顔になってもらいたい」(佐藤社長)

 農業とITを融合させる画期的な試みは、農業の国際化の流れの中にあって「攻めの農業」の一翼を担う可能性を秘めている。(福田徳行)

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 【取材後記】八戸工業大内の一角にある小さな部屋が開発センター。とはいっても机とパソコン、FAXがあるだけだが、佐藤社長の言葉からは「とにかく農業を活気あるものにしたい」という意気込みがひしひしと伝わってきた。記者はIT分野に疎いが、分かりやすく説明してくれた。農業とITはほど遠いものと思っていたが、新しい農業の形として今後、注目されそうだ。

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 【企業データ】本社は青森県八戸市長苗代2の2の7((電)0178・38・6191)。開発センターは同市妙大開88の1、八戸工業大内。設立は平成27年12月。資本金300万円。26年度あおもり起業家グランプリビジネスコンテストのベンチャー大賞などを受賞。今年3月には同大地域産業貢献賞を受賞。URLはhttps://www.facebook.com/dennouassist/