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余震に負けず心落ち着かせた 「字で人に勇気を」 熊本

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余震に負けず心落ち着かせた 「字で人に勇気を」 熊本

熊本地震の余震の中で、書道に打ち込んだ村上望華さん 熊本地震の余震の中で、書道に打ち込んだ村上望華さん

 ■産経ジュニア書道コンクール入賞・村上望華さん(12)

 高校生以下を対象とした「2016産経ジュニア書道コンクール」(産経新聞社、産経国際書会主催、文部科学省ほか後援)の受賞作が6日発表され、熊本県合志市須屋の市立西合志東小6年、村上望華(もか)さん(12)が「産経新聞社賞」に選ばれた。熊本地震の余震が続く中、一時は出展をあきらめかけたが、書に励むことで心を落ち着かせた。(南九州支局 谷田智恒)

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 「産経ジュニアコンクールは2年前にも挑戦したが、結果はダメでした。小学生最後の思い出として、再挑戦したかった」

 各地の書道コンクールで入賞・入選を繰り返し、これまで120枚以上の表彰状を獲得した。

 村上さんが文字に興味を持ったのは5歳のころだった。母、香織さん(36)の字をまねるようになった。

 「どうせやるなら、ちゃんとした先生に習った方がよい」。こう考えた香織さんは、地元の書道教室「光風会」に週1ペースで通わせた。

 まずは硬筆を、6歳から毛筆を握るようになった。

 めきめきと上達し、全国規模の書道コンクール幼稚園の部で入賞した。モチベーションはさらに高まった。さまざまな新聞社主催のコンクールで軒並み好成績を収めた。

 今年3月。「小学校生活最後の思い出にしよう」と、産経ジュニアへの再挑戦を決めた。

 その直後の4月、熊本地震が発生した。

 自宅の被害はなかったが、警察官である父、昌隆さん(44)は対応に追われ、自宅へ戻れない日々が続いた。学校も「前震」翌日の4月15日から休校となった。友人とも離ればなれ。大きな余震も続いた。

 「不安で外出する気分にもならず、かといって、することもなかった」

 そんな村上さんに、母の香織さんは「怖がっているより、習字の練習をしたら」と声をかけた。「本震」の2日後から書道を再開した。

 だが、揺れは続いた。「締め切りも迫る中、とにかく練習しなければと集中し、書こうとすると、グラッと来て、また不安になる。その繰り返しでした。でも、筆を持っていると、心が落ち着く自分もいた」と振り返った。

 産経ジュニアでは学校で使う半紙より大きなサイズの「条幅」を使う。地震直後は専門店が閉まり、入手できない状態だった。自宅にあった150枚の紙を使い、課題の「宇宙遊泳」と、自由作品の「天馬飛翔(ひしょう)」を、締め切り間際の5月末まで書き続けた。

 「本当は、もっと練習して出展しなければ入賞は難しいだろう」。心から納得はできなかったが、見切り発車で提出した。

 それでも、6月に実施された審査では、高い評価を得た。8486点の応募作品から産経新聞社賞に選ばれた。産経国際書会専管理事の小林紫雲氏(70)は「気宇壮大な堂々とした作品。宇宙を自由に遊泳し、楽しんでいる光景が目に浮かぶ」と評した。

 5月には、地元紙主催の学童書道展でも入賞した。新聞掲載された作品を見た母の知人から「勇気づけられた。元気が出た」との電話も寄せられた。

 「素晴らしい賞をいただき、とてもうれしい。今後も書道を続け、もっとうまくなりたい。将来は、自分の字で人を勇気づけたり、元気を与えたりできるような書道家になりたい」。笑顔で語った。