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【みちのく会社訪問】佐藤石材工業(宮城県涌谷町)

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【みちのく会社訪問】
佐藤石材工業(宮城県涌谷町)

 ■石を通じ100年続く価値届ける

 JR仙台駅前のオフィスビル「アエル」に、火山岩の「黒曜石」でできたグラスや器を展示するギャラリーがある。創業110年の墓石の老舗が、フランスに拠点を置く黒曜石の加工・デザインを手がける「キュバール」社の代理店として販売している。

 ◆何代も使われる家具を

 経営方針は「Centuria・Life(センチュリア ライフ)」。佐藤真樹(しんじゅ)社長(51)は「顧客に石を通じて100年以上続く価値を届けたい」と意気込む。

 平成23年3月11日に発生した東日本大震災では津波の被害こそ受けなかったものの、大きな揺れで本社のある宮城県涌谷町内の墓石は壊滅的な被害を受けた。佐藤社長は「石には100年以上先の時代に歴史を伝える役割がある」と考え、「壊れたものを復元させるに止まらず、言葉を記して後生に教訓を伝えるなどもっと普遍的なものをつくりたい」と奮起した。

 「県内だけでも2千件の墓石が損壊した」(佐藤社長)といい、震災後4年間は墓石の修復に力を注いだ。津波到達地点に設置する「津波記憶石」の制作にも同業者らと協力して取り組み、気仙沼市内の石碑の施工などを担当した。

 「石は代々受け継いでいけるもの。石の家具を何代にもわたって使うような文化を広めたい」

 佐藤社長は16年の就任以降、ドイツ、イタリアなどで行われる展示会や東京の雑貨店などに足を運び、石材を使った優れものを探し続けた。22年秋、東京の大手雑貨店で、黒く輝き透明度も高い黒曜石でできた名刺立てやトレーなどを見つけた。メーカーがフランスのキュバール社だと突き止め、訪ねようと思った矢先に震災に見舞われた。

 ◆黒曜石に新たな可能性

 佐藤社長がキュバール社の社長と初対面を果たしたのは昨年6月。先方は佐藤社長の「商品を日本でぜひ紹介したい」との申し出に快く耳を傾けてくれたという。同10月に再び渡仏して商品の見せ方などを提案。今年1月、正式に販売代理店契約を締結した。

 今春、JR仙台駅前に黒曜石でできた商品を展示するギャラリーを構えた。東京の大手代理店は円安ユーロ高の影響で取り扱いを既に停止しており、「キュバール社が作った黒曜石の商品を日本で取り扱う唯一の店」となった。

 商品はより透明度の高い黒にこだわった。ウイスキー用グラスは価格が1つ8万円。決して安くない価格設定だが人気商品だ。佐藤石材工業の番頭、安達敬久さん(61)は「ガラスの板材と同じくらいの硬さがある」と話し、「石ごとに自然の模様が付いているため、形は同じでも一つとして同じ柄の商品はない」と胸を張る。

 安達さんは「黒曜石を墓石の一部に埋め込むなど、いろいろな転用方法がある」として、黒曜石に新たな可能性を見出す。

 「見せ方や売り方を工夫して石の良さをより深く知ってもらいたい」(佐藤社長)。良質な品を求める顧客を狙い、東京進出を目指す。(岡田美月)

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 宮城県涌谷町涌谷入茂田15の1。明治39(1906)年10月創立。昭和47年2月に法人化。墓石の加工、販売、施工のほか、石材製品の輸入、販売を手がける。資本金1千万円、売上高2億円(平成26年9月期)。従業員数21人。(電)0229・43・3030。

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 【取材後記】黒曜石でできたグラスや器は漆黒で深みのある色合いなのに、透き通ってみえる不思議な風合いで美しい商品だった。この商品を東京で見つけ、フランスまで交渉に飛んでいった佐藤真樹社長の熱意が伝わる作品だ。「石には歴史を伝える役割がある」。お盆の時期を間近に控え、次に帰省したときには、実家近くの寺へ墓参りに行こうと思った。