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【参院選検証・18日間の戦い】(上)自民、現新競い相乗効果

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【参院選検証・18日間の戦い】
(上)自民、現新競い相乗効果

 「それぞれが努力し、切磋琢磨(せっさたくま)した結果だ」。参院選千葉選挙区(改選数3)で猪口邦子と元栄太一郎が上位2議席を勝ち取ったことを踏まえ、自民党県連会長の桜田義孝は両陣営の健闘をたたえた。2人の得票数は計約133万票。2年前の衆院選の県内13選挙区で同党候補者らが集めた約126万票を上回る大勝を収めた背景には、両陣営による激しい「デッドヒート」があった。

 ◆「石井流」の組織戦

 「一人でも多くの有権者の期待に応えたい。全身全霊で頑張っていく」。1日に千葉市内の市民会館で開かれた個人演説会。元栄が国政挑戦の意気込みを語ると、万雷の拍手が沸き起こった。定員約1千人のホールは立ち見が出る盛況。会場に入れず帰った人もいたという。

 元栄陣営は街頭活動に加え、県内各地で個人演説会開催に注力。業界団体の関係者や地方議員の支持者らを集め、新人らしからぬ「組織戦」を展開した。

 陣営に出入りしたある地方議員は「なじみの業界団体の方に彼の支持をお願いしたら、『元栄さんは正月ぐらいにあいさつに来てくれたよ』と言われた。ただの新人じゃない。まるでベテランのような動きだ」と感嘆し、こう付け加えた。

 「完全に彼を指導する(参院議員の)石井準一さんのやり方だね」

 ◆力配分に差

 今回の選挙戦では、石井と石井に近い自民党の県議グループ約20人が元栄を支援。石井は6年前の選挙では猪口を支えたが、今回は元栄の当選に「政治生命をかける」と言い切った。一方の猪口には、参院議員の豊田俊郎と別の同党県議グループ約30人が支え、6年前とは支援の構図が一変した。

 党関係者によると、党が公示直前に実施した世論調査では、元少子化担当相として知名度で勝る猪口が大きくリード。元栄は3位に入ったが4、5位と接戦だった。公示直後の調査でも同様だった。

 この結果を踏まえ、自民党は悲願の2議席獲得を実現させるため、公明党に投票を元栄に傾斜するよう依頼。また、選挙期間中の土曜日だった2日には自民党農林部会長の小泉進次郎、ラストサンデーの3日には首相の安倍晋三が両陣営の応援に駆けつけた。

 猪口への応援演説は安倍、小泉とも1カ所ずつだったのに対し、元栄はそれぞれが複数カ所で行うなど、力配分の差は歴然だった。選挙活動の経験が豊富な猪口陣営の男性スタッフは「参ったなあ。こんなの初めてだ」。猪口を支援するある県議も「向こう(元栄)の方が勢いがあるね」と漏らした。

 ◆「どうだ!」

 「女性議員が少ないのは再選するのが難しいから。私は与党唯一の現職候補です。議席を守り抜かせてください」。投票日前日の9日、JR船橋駅南口で猪口は必死の形相で訴えた。

 猪口は初当選後、地元の集会に顔を出し、県議会の傍聴に訪れるなど地道に地盤固めを行ってきた。陣営関係者によると、終盤、猪口は周囲に「トップでなければ、当選しても勝ちではない」などと元栄の動向を意識した発言をしていたという。

 迎えた10日の投開票日。激しい競争は相乗効果という形で表れ、猪口が76万票、元栄が57万票の“自民党圧勝”で幕を閉じた。

 同日夜、当選確実の報が入り、喜びに沸く選挙事務所で報道陣の取材に応じた猪口は「議席を守れないことがあってはいけない選挙だった。(公示直前も含め)安倍首相が2回も来てもらえたので心の支えになった。ひがむ理由はない」と謙虚に回答。だが、その最中にテレビで自身が他候補を圧倒的に引き離しているとする出口調査の結果が流れると、拳を突き上げて叫んだ。

 「どうだ!見たか。トップだぞ!」

                     ◇

 自民党の2議席獲得、民進党の1議席死守という結果に終わった参院選千葉選挙区。18日間の戦いを振り返る。(敬称略)