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【子供を性被害から守れ】条例成立 多くの県民の願い結実

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【子供を性被害から守れ】
条例成立 多くの県民の願い結実

 淫行処罰規定を持つ県の「子どもを性被害から守るための条例」が1日の6月定例県議会最終日に可決され、成立した。インターネット空間の拡大という時代と環境の大きな変化に伴い、悪意を抱く大人から性被害を受ける子供が増えるなか、この期に及んで県内には一部の団体、メディアが「県民運動の伝統」を錦の御旗に条例制定をかたくなに拒み抵抗し続けてきた。だが最後は子供を性被害から守りたいという多数の県民の切なる願いと良識がゴールに導いた。

 淫行処罰条例を持たないゆえにネット上で「女の子と遊ぶなら長野県」と書き込まれる不本意な“風評被害”にもようやく終止符が打たれることになる。

 道のりは長かった。ここまで条例制定が遅れた背景には、淫行を処罰する条例に頼らずに県民運動や関係事業者の自主規制、行政の啓発を3本柱に青少年健全育成に取り組んできた「伝統と誇り」がある。歴代知事たちも条例化を選択、決断することはなかった。

 だがそんな“自負”が幅を利かせられたのも今は昔のことだ。かつて健全育成活動は有害図書自動販売機の排除運動などが中心だったが、ネットの急速な普及で社会環境が激変し、子供たちを取り巻く危険が顕在化した。平成24年には、県内で淫行処罰規定の条例を持つ東御市で教諭2人が逮捕される事件が発生した。大人のモラル低下もあいまって、県はこれまでの健全育成施策の見直しを迫られる形となった。

 25年に設置された有識者委員会は、「これまでの対策の延長では子供たちを守りきれない」として条例制定が必要と結論付けた。実際に性被害を受けた女性からの証言も大きく議論を左右した。長く運動を支えてきた県民会議も、条例が必要だとする検討結果をまとめるに至った。

 検討開始から3年間、条例が想定する処罰規定に冤罪(えんざい)や恋愛への公権力介入を過剰に懸念する意見とともに、「県民議論の不足」を盾にする反対論は止まなかった。対する県は、法律の専門家による検討や子供の支援・育成に関わる53団体、県民延べ約900人と意見交換を重ねるなど委曲を尽くした。“抵抗勢力”の主張はもはや「根拠なき駄々」でしかなくなった。

 阿部守一知事は議会終了後の記者会見で「引き続き県民運動に多くの力を結集し、性被害の予防と被害者の支援のため、条例の総合的な運用を行っていくことで子供たちが性被害に遭うことがないようにしたい。条例の考え方や内容をできるだけ多くの方に理解いただけるよう取り組んでいく」と言い切った。