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【熊本地震】高齢者・障害者らの安否確認 要支援者名簿生かせず難航

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【熊本地震】
高齢者・障害者らの安否確認 要支援者名簿生かせず難航

避難する高齢者や障害者ら。熊本地震では災害弱者への支援が課題となった 避難する高齢者や障害者ら。熊本地震では災害弱者への支援が課題となった

 熊本地震では、介護を必要とする高齢者や障害者らの安否確認と避難に、課題を残した。多くの自治体は事前に要支援者名簿を作っていたが、管理システムがダウンしたり、情報が古かったりした。普段から名簿を外部に提供する場合は、記載された本人の同意が必要で、災害対策のハードルになっている。

 ■更新

 政府は平成25年、災害対策基本法を改正し、支援が必要な人の名簿作成を市町村に義務付けた。東日本大震災で65歳以上の死者が全体の6割を占め、障害者の死亡率は住民全体の約2倍に達したからだ。

 総務省消防庁によると、昨年4月時点で全国の市町村の52%が名簿を作成済みで、今年3月までの作成予定を含めると98%に上った。だが、熊本地震の例からは作った後の運用に課題が浮かぶ。

 2度の震度7に襲われた熊本県益城町は、約2400人分の名簿データを準備していた。ところが、地震後、役場に入れず、パソコンも動かなくなり、5月上旬まで閲覧不能に陥った。結局、医療団体が避難所を回るなどして安否を確認した。町の担当者は「名簿を印刷し、紙で保存しておくべきだった」と悔やむ。

 同県嘉島町は名簿の更新が滞り、亡くなったり、引っ越したりした人が載ったままだった。慌てた担当者は、地域の団体が作っていた別の名簿を使って安否確認を進めた。同県宇土市でも、安否確認先として掲載された近親者に電話すると同居しておらず、逆に安否を尋ねられたケースがあった。

 ■安心

 行政に代わり、活躍したのが民間団体だ。社会福祉法人「熊本県視覚障がい者福祉協会」が運営する熊本県点字図書館(熊本市)は、利用者名簿や、県が開示した視覚障害者手帳を持つ人の情報を基に、13市町村計約1900人に、電話や戸別訪問をした。篠原静雄館長(54)は「必要な物資や困ったことも聞いた。細やかな支援で民間が担う役割は大きい」と指摘した。

 益城町の自宅が全壊した大西光さん(72)は、緑内障を患う。避難所にいた4月16日、点字図書館の職員から携帯電話に連絡があった。「身の回りのことまで相談に乗ってくれて安心した」と振り返った。

 ■同意

 災対法は平常時から消防や警察、民生委員、自主防災組織に名簿情報を提供すると規定する。ただ、本人の同意が得られた場合に限られ、同県阿蘇市の担当者は「同意しなかった人にも支援は必要だ。個人情報との兼ね合いが難しい」と漏らす。

 自治体が条例で規定を設ければ、本人の同意なしに外部へ提供でき、支援の実効性を高めることになる。しかし、熊本市の担当者は「内容を詳しくするほど外部提供は難しい。精神疾患や持病などプライベートな情報まで、(自治体が)勝手に提供できるようにする条例は現実的ではない」と説明した。現状では戸別訪問で一人一人理解を得るしかない。

 東日本大震災の際、福島県南相馬市から名簿の提供を受けた同市のNPO法人「さぽーとセンターぴあ」の郡信子施設長(55)は「個人情報を守っても、命を守れなければ意味がない」と語った。当時、名簿の情報が古く、市に障害者手帳を持つ人の情報を求めたが、開示まで2週間以上かかった。郡氏は「使える名簿が手元にあり、すぐ支援に動ける環境が必要だ」と訴えた。