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熊本地震の迷い犬7割、飼い主の元に 熊本市啓発と「犬好き」県民性

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熊本地震の迷い犬7割、飼い主の元に 熊本市啓発と「犬好き」県民性

地震で飼い主からはぐれた犬を世話する熊本市動物愛護センターの職員 地震で飼い主からはぐれた犬を世話する熊本市動物愛護センターの職員

 熊本地震では、混乱で飼い主とはぐれる犬が相次いだが、熊本市動物愛護センター(東区)で保護した犬74匹のうち、7割が飼い主の元に戻った。返還率は過去の災害に比べると高いという。全国に先駆けて、犬や猫の「殺処分ゼロ」を目指し、啓発を続けた効果もあったといえる。(九州総局 奥原慎平)

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 環境省の調べでは、東日本大震災(平成23年)の影響で保護された犬は福島、宮城、岩手の被災3県で計2231匹だったが、飼い主に戻ったのは計1022匹だった。熊本市と同じ政令指定都市の仙台市でも、保護した354匹のうち、返還は54%の192匹だった。

 東日本大震災は広範囲に被害が出た上、原発事故もあった。大地震とはいえ局地的だった熊本地震と単純比較はできないが、それでも熊本市動物愛護センターの返還率は高いといえる。

 東日本大震災で被災ペットの保護活動に取り組んだ長野市の環境保護団体「LIA」の代表、矢吹蓮氏は「市の日ごろの啓発活動のたまものではないか」と推測する。

 飼育放棄され、捨てられた犬や猫は殺処分される。熊本市は平成14年度、全国の自治体に先駆け、「殺処分ゼロ」の取り組みを始めた。

 同センター職員は飼い犬を持ち込む住民に、生涯飼育を定めた動物愛護管理法を説明し、翻意を促した。犬の首輪に連絡先を付けて、センターに持ち込まれる数を減らす「迷子札運動」も展開した。

 この結果、26年度に犬の殺処分ゼロを達成した。この活動は「熊本方式」として全国から注目される。

 同センターの村上睦子所長は「避難生活中でも、ペットを家族の一員として必死に探す人が多かった。しっかり愛情をもって飼っているのだろう。はぐれた犬をセンターで一元管理したことで、見つけやすかった面もあると思う」と語った。

 こうしたセンターの啓発活動に加え、「犬好き」な県民性が、地震における返還率の高さにつながったかもしれない。

 肥後銀行系のシンクタンク、地方経済総合研究所(熊本市)が25年に実施した調査では、犬を5匹以上飼育する「多頭飼い」の割合は、県内では4・6%だった。これは熊本県以外の九州の平均値(1・1%)の4倍以上だった。ただ、住まいを失った被災者は今後、仮設住宅や公営住宅などに転居する。その際に、ペットを手放すことを迫られる可能性もある。

 村上氏は「どうしても飼えないのであれば、信頼できる譲り先を探してほしい」と語った。