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川崎老人ホーム転落死、3回目起訴 県警「捜査は尽くした」

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川崎老人ホーム転落死、3回目起訴 県警「捜査は尽くした」

 川崎市幸区の有料老人ホーム「Sアミーユ川崎幸町」で3人が相次いで転落死した事件は15日、横浜地検が3人目の女性に対する殺人罪で今井隼人被告(23)を追起訴したことで、県警による捜査が終結した。防犯カメラの映像や目撃証言など客観的な裏付けが乏しい事件だったが、捜査幹部は「(立件に向けては)ハードルは高かったが、捜査は尽くした」と語った。

 「当初は事件・事故の両面で捜査を始めた。夜間の老人ホームという閉鎖された中で発生しており、消去法的に実行犯を今井被告へと絞り込んでいった」

 ある捜査関係者は、こう明かす。

 県警が今井被告への任意聴取に踏み切ったのは今年1月下旬。動機について「3人とも手がかかった」とする趣旨の供述をしたとされる。その模様は録音録画しているが、同2月15日の逮捕後、しばらくして黙秘に転じた。

 施設の1階玄関とエレベーターに設置されていた防犯カメラには、今井被告と犯行とを直接結びつける映像はなく、転落場所の裏庭は表通りからの死角で、今井被告と被害者がベランダにいた姿や転落の瞬間を目撃した人も見つからなかった。別の捜査幹部は「認知症の入所者もいて通常の聞き込みとは異なる難しい面があった」とも吐露する。

 いずれも“決め手”に欠く中で、県警が着目したのが施設の夜勤態勢と分刻みで業務内容が定められた夜勤用スケジュールだった。

 3件の転落死があった時間帯はいずれも、1人が仮眠し、今井被告を含む2人が担当フロアに分かれて業務にあたっていた。

 夜勤スケジュールでは、巡回や入居者の介助など、業務内容が細かく示されている。捜査本部は、これらを詳細に分析することで犯行の蓋然性を浮かび上がらせるとともに、供述内容と現場や遺体の状況が一致するか、施設を現場検証して確認。ようやく立件へのハードルをクリアした。

 捜査関係者は「本人が認めなければ立件は難しかった」と振り返った上で「高齢長寿社会の“ひずみ”を浮き彫りにした事件だ」と語った。