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文化の灯火を消さない 「映画の街」土浦、個人経営の映画館が奮闘 茨城

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文化の灯火を消さない 「映画の街」土浦、個人経営の映画館が奮闘 茨城

 ■地元撮影の作品上映も

 かつて「映画の街」と呼ばれるほど映画館が立ち並んだ土浦市。現在、唯一の存在となった個人経営の映画館が奮闘している。地元で撮影された作品など、無名の監督が手掛けた自主映画の上映にも乗り出した。土浦で育まれた文化の灯火を消したくない-。映画を通じて長い間、町の移り変わりを見守ってきた経営者には、そんな熱い思いがある。(海老原由紀)

                   ◇

 映画館は、土浦市川口のTCビルにある「土浦セントラルシネマズ」。昭和32年に木造2階建て1スクリーンで開館した「祇園セントラル映画劇場」が前身だ。その後、ビルに建て替え、スクリーン数を4つに増やし、名称も変えた。

 映画館の社長、寺内龍地(りゅうじ)さん(61)は昨年3月、霞ケ浦周辺を舞台にした映画「花蓮(かれん)」の紹介記事が掲載されたフリーペーパーを目にした。土浦市でも撮影されたと知り、プロデューサーと連絡を取った。すると、作品には地元の人間が見れば分かる場所が映し出されていた。

 商業作品とは違い、自主映画は上映場所や期間が限られる。昨年12月、花蓮を上映した寺内さんは「監督を発掘して、世の中に発信し、彼らの映画を知ってもらおう」と心に決めた。

 この少し前には、映画業界に押し寄せるデジタル化の波を受け、映画館はフィルムからデジタルでの映写に移行した。1スクリーンで1千万円かかる設備投資に、寺内さんはすぐに踏み切れない気持ちもあった。

 それは、平成23年の東日本大震災でTCビルが被災したからだ。ビルは寺内さんが所有し、映画館のほかにテナントが入る。テナントを優先に復旧させたが、2つのスクリーンはいまだ再開できずにいる。

 現在は映画館といえば、郊外の商業施設に併設されたシネマコンプレックスが主流となっている。青春時代に娯楽の一つだった映画を見に行きたいと思っても、移動手段がない高齢者も少なくないという。

 巨大なスクリーンと大迫力の音響で自分が映画の世界にいるかのような臨場感を味わえる。そんな映画館の魅力を求めて、土浦セントラルシネマズには今日も昔からの常連客が足を運ぶ。

 寺内さんは「また来るねと、『タイタニック』を12回も見に来てくれた女の子もいました。何とか地元の映画館を残したい」と力を込めた。