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福島から避難、「200円カレー」で新潟に恩返し

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福島から避難、「200円カレー」で新潟に恩返し

 消費税込みで1杯200円の格安カレーライス店の運営を通じ、東日本大震災から5年となる被災地や、震災後に県内に福島県から避難した人たちにエールを送る起業家が新潟市内にいる。東京電力福島第1原子力発電所の事故を機に福島市から家族で移住した原価率研究所の菅野優希社長(36)。「試練を乗り越えた先には喜びが待っている。未来の道を切り開けるように元気を与えたい」と笑顔で話す。

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 平成23年3月11日。宇都宮市で仕事中に激しい揺れに見舞われた。福島市にいる家族と13日になって連絡がようやく取れ、翌14日に同市に戻った。安堵(あんど)したのもつかの間、福島第1原発の状況に危機感を抱いた。「福島の女性や子供が放射能汚染のリスクにさらされ、避難しなければと思った」と振り返る。

 福島市出身の菅野氏は高校時代、ブラジルに留学。現地で見かけたホットドッグの移動販売車をヒントに帰国後、スイーツの移動販売店を21歳で立ち上げ、その後、マテ茶を輸入販売する貿易会社を起業した。

 そんなとき、新潟の広告代理店からマテ茶のPRに関する依頼が来た。新潟と縁を感じ、震災翌年の24年8月に新潟市に移住。県民の優しさに触れる中で「新潟に恩返ししたい」という思いを抱き、26年3月に原価率研究所を設立した。

 最初の研究テーマに選んだのはカレーライスのビジネスモデル。「子供や高齢者、貧しい人や豊かな人にも『家庭でなじみのある普通の味』を楽しんでほしい」という思いからだった。過去に取り組んだ事業で「自分の感性よりも人が求めるものを優先する大切さを学んだ」という。

 同年5月、新潟市中央区に新潟駅前本店を開店した。メニューはカレーライスのみ。価格を抑えるため業者から大量・安定的に食材を調達し、ルーは大手食品メーカーと共同開発した。容器とスプーンは使い捨てのプラスチック製を採用し、余分な水道代や洗う手間を減らす工夫をした。

 国産の鶏肉を使い、以前は県産米「こしいぶき」を仕入れるなど味にもこだわる。顧客が満足できるようにルーとご飯の総量は約600グラムとした。

 今年1月には東京に初進出し、7店目となる「竹ノ塚店」を足立区でオープンした。フランチャイズ方式で2年以内を目標に国内で50店舗、将来的には1千店舗の展開を目指す。事業の拡大を通じ、商店街の活性化などで「地域を元気付けたい」とも話す。

 震災直後、カレーライスを求めて長蛇の列ができた被災地の様子を見た。「50食のカレーライスを10分で作るノウハウがあり、災害などの有事に備蓄食材を供給する役割も担いたい」と、7つの全店舗に200食分ずつ備蓄した。ビジネスと地域貢献の両面で持ち前の開拓精神を発揮し、全国各地を勇気付けたい考えだ。