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供養続けた小豆島に感謝 80年前、海難事故で創業者犠牲 物流会社、社史に掲載へ 香川

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供養続けた小豆島に感謝 80年前、海難事故で創業者犠牲 物流会社、社史に掲載へ 香川

 約80年前、香川県の小豆島沖で起きた客船の海難事故。犠牲者の一人に総合物流会社「センコー」(大阪市)の創業者、富田正次さんがいた。「地蔵菩薩像まで建立して法要を続けていたことに驚きました。ぜひ、富田氏の顕彰事業で取り上げたい」。事故後、犠牲者の供養を続けていた小豆島の人たちの姿に感動した同社の社員らが、島での追悼行事などを盛り込んだ同社の100周年記念誌(社史)の編纂(へんさん)を進めている。

 きっかけは、産経新聞などに掲載された海難事故の犠牲者への追悼行事の記事だった。事故から80年を迎えた昨年7月、小豆島の有志らが地蔵菩薩象前での法要を企画し、遺族らに参加を呼びかけた。法要は遺族らの参列がないまま営まれたが、同社のスタッフが新聞報道を通して、「事故の史実を風化させまい」とする島民らの熱意を知り、感銘を受けたという。

 同社によると、富田さんは明治8年に高松市で生まれ、日本海軍や汽船会社などに所属。大正5年に同社の前身となる富田商会を設立し、化学製品製造業「日本窒素肥料」の原材料や製品を輸送する事業を営んだ。敗戦などによって一時会社は解散したが、昭和21年に復活した。

 事故当時、一等船室にいたとみられる富田さん。濃霧の夜、小豆島沖で悲劇が起きた。現場海域は濃霧がよく発生するなど海難事故が絶えなかったことから、事故後、海の安全航行を願って島の有志でつくる「小豆島徳風会」が事故現場を望む小豆島町の釈迦ケ鼻に「徳風地蔵菩薩像」を建立。犠牲者を供養したり、安全祈願祭を行ったりした。

 同社の社長室スタッフは「富田さんが海難事故で亡くなったことは知っていたが、小豆島の人たちが地蔵菩薩像まで建立して長く法要を続けていたことには大変驚いた。今年で創業から100周年を迎えるわが社。記念誌を通して、犠牲者を追悼してきた島の姿などを社内をはじめ、多くの人に伝えたい」と話している。

 同会の事務局長を務めていた浜口勇さん(72)は「小豆島から協力できることがあればどんどん手伝いたい」と、情報の提供などに意欲を示している。

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【用語解説】小豆島沖の海難事故 

 昭和10年7月3日午前1時ごろ、乗客、乗員計約230人が乗船した旧大阪商船の客船「みどり丸」(1724トン)が大分県別府港から神戸市へ向かう途中、貨物船「千山丸」(2775トン)と衝突して沈没。12都府県の1~69歳の乗客99人、乗員8人が犠牲となった。