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【栃木この人】郷土史愛好団体「安蘇史談会」会長・京谷博次さん(82)

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【栃木この人】
郷土史愛好団体「安蘇史談会」会長・京谷博次さん(82)

 ■「故郷の素晴らしさ伝えたい」

 佐野市の歴史を調べて半世紀、市広報紙や地元紙などに掲載された著作物に手を加え、一冊の本にまとめた。題名は「ぶらり さの歴史さんぽ」。平安期の武将・藤原秀郷ゆかりの唐沢山城跡をはじめ名所旧跡など66件を紹介している。

 「一区切り。ある意味、集大成でしょうか。ふるさとの素晴らしさを一人でも多くの市民に知ってもらいたい」

 昭和40年代後半、佐野市史の編纂(へんさん)事業に関わり、本格的に郷土史に携わるようになった。主に戦後から現代を担当し、約10年間、調査研究し、執筆に従事。本業の農業は早朝や夕方、汗を流すことでしのいだ。

 実績が認められ、平成の大合併前の田沼、藤岡、西方の計旧3町の町史編纂も相次いで手掛けた。平成3年には県文書館から「古文書専門員をお願いしたい」と依頼され、17年まで旧家の古文書整理などに当たった。「感慨? 特にありませんね。きちんと仕事をこなしただけ」と謙虚な姿勢を崩さない。

 公的業務に加え、昭和59年、周囲の人に推され、郷土史を調査研究する安蘇史談会を発足させた。

 現在、中高年を中心に会員約50人。毎月2回、調査研究発表の場として例会を開くほか、現地調査会を年2、3回、一般向け講演会を年6回開催する。最大の所産は毎年1回発行の会報「史談」で、今年で既に31号を数え、調査研究報告は多岐にわたり、500件以上に上る。内外から一目置かれているゆえんだ。

 「会員一人一人の郷土に対する思いが熱いということでしょう。各人がテーマを決め、長く地道に取り組んでいるのも長続きの要因では」と話す。佐野の歴史を取材する度に、異口同音に「京谷さん」の名前が漏れる。会長個人の豊富な知識と人望が支柱であることはいうまでもない。

 原点には戦争体験がある。軍国少年として育ち、昭和20年8月の終戦で、それまでの歴史観、価値観が否定された。「郷土の歴史を正確に伝えよう」と農業の傍ら独自に調査研究。青年団の機関誌などに発表し続け、市町史編纂に関わる素地を育んでいた。

 帰り際、山積みの史料の中から古文書のコピーを取り出した。「これは旗本だった佐野氏の知行地の史料。まだまだ伝えたいことが残ってますね」。集大成は先延ばしになりそうだ。(川岸等)

                   ◇

【プロフィル】京谷博次

 きょうや・ひろじ 昭和8年、佐野市生まれ。同市立北中学校卒。佐野市をはじめ旧田沼、藤岡、西方町の市町史編纂事業を手掛け、県文書館古文書専門員も務めた。昭和59年の安蘇史談会発足時から会長。著書に「ふるさと再見」「わが町さんぽ」など。佐野市在住。