産経ニュース

【東西線出発進行!】(上)まちづくり変える「十字型」 仙台

地方 地方

記事詳細

更新

【東西線出発進行!】
(上)まちづくり変える「十字型」 仙台

 「地下鉄には雪とか雨とか天候に左右されない『定時性』があり、ビジネス面でも安心。(東西線の開業が)仙台の経済、復興と合わせた活性化の中でその大きな活力として生かされれば…」。そう期待を込めるのは運営者となる仙台市の奥山恵美子市長だ。

 公営地下鉄で路線を1つしか持たないのは全国で仙台だけだ。市は平成4年に全面開業した南北線を軸に据え、仙台駅を中心に南と北に長町地区と泉中央地区という2つの拠点を置き、市街地を外側に広げていく構想を描いた。だが、人口減少が進むにつれ、その狙いは外れた。

 東北大工学研究科の奥村誠教授(土木工学)は「これまでのまちづくりでは仙台駅に人や社会の機能が集中し、大町や一番町、国分町などを行き交う人が減った。南北線は都市を栄えさせるように作れていなかった」と指摘する。

 1路線だけの地下鉄を補完してきたのが路線バスだ。だが、仙台駅前のバス停は50カ所に上り、ほぼパンク状態にある。しかも、広瀬川や仙台城跡が東西の行き来のボトルネックとなってきた。

 これを解消すると期待されるのが市を東西に横断し、南北線と交差する東西線だ。東端の荒井駅(若林区)から中心部の仙台駅(青葉区)を通り、西端の八木山動物公園駅(太白区)へと続く全13駅、全長13・9キロ。市を縦断する南北線と合わせて十字型の移動手段が完成する。

 まちづくりのコンセプトも大きく変わる。十字型となった沿線に集中開発で施設や人を集め、都市機能を広げるのではなく、各駅の徒歩圏内に集約していく。目指すのは、国土交通省が今後の国づくりの指針にしている「コンパクトシティー」にほかならない。

 実際、仙台駅を中心に南北、東西両線の端から端の駅までは30分以内で移動が可能となる。さらに、東西、南北両線の沿線には、大学や高校のキャンパスが点在することから、「通勤・通学時間も短縮される」(東西線沿線まちづくり課)としている。

                  ■   ■ 

 緑やオレンジ色の帯状の板が連なる近未来的なデザインの2階建ての建物。真新しい歩行者・自転車用のえんじ色の道路と黒光りする車道がコントラストをつける。東西線の始発駅となる荒井駅だ。

 開業前の駅付近では通行人もまばらだが、駅舎には市民同士の交流の場や保育施設などを整備。タクシーやバス、一般車の乗降場や駐輪場も備える。

 今後、急ピッチで住宅地や大規模商業施設の開発が進み、病院や警察署も新設される。市は同駅周辺を「駅を中心に歩いて暮らせる便利な住宅地」に変貌させる考えで、新しい街が丸ごと一つ出現する。東西線沿線の中でもっとも大きく変わる街といえそうだ。

 東西線は、まもなく5年を迎える東日本大震災からの復興とも無関係ではない。荒井駅近くには復興公営住宅も建設された。

 市復興公営住宅室によると、今年5月までに荒井駅の徒歩15分圏内に197戸と101戸の集合住宅が2棟、戸建て住宅が15戸完成。それぞれ完成の翌月には入居者が決まり、ほぼ満室になったという。

 全国的にも、地下鉄の新線が本格開業するのは7年ぶり。しかも、今後は当面大きな計画はなく、その注目度は高い。

 日本地下鉄協会(東京)は「東西線は、全国の地下鉄車両の中でも最新鋭の車両で、駅ごとの特色も際立っている。(地下鉄を軸とした都市開発の)試金石になるだろう」と話している。

                  ■   ■ 

 仙台市地下鉄東西線の開業まであと10日に迫った。着工から10年あまりを費やした一大プロジェクトは東北最大の都市・仙台に何をもたらすのか。3回に分けて検証する。