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鹿児島・長島町が若者のUターン後押し 特産ブリで奨学金制度新設へ

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鹿児島・長島町が若者のUターン後押し 特産ブリで奨学金制度新設へ

出荷直前の鹿児島・長島の養殖ブリ「鰤王」(東町漁協提供)

 鹿児島県長島町(川添健町長)が、若者のUターンを後押ししようと、特産のブリを活用した「ぶり奨学金」を来年度、新設する。漁協からブリ1匹あたり1円の寄付を受け、これを原資に、町が奨学金返済を肩代わりする。全国でも極めて珍しい取り組みで、町は「出世魚で回遊魚のブリのように、地元に戻ってきてほしい」と期待する。

 長島町は、八代海と東シナ海を隔てる位置にある。周辺の海は潮流が速く、身が引き締まった魚が獲れる。加えて、地元の東町漁協は稚魚から出荷まで一貫して育てるブリ養殖の仕組みを作り上げ、ブランド「鰤王」として売り出した。

 東町漁協は単一漁協として、日本一の養殖ブリ生産量を誇るだけでなく、欧米にも輸出している。

 ただ、町からは若者が流出し、過疎化が進む。

 平成18年の「平成の大合併」から9年間で、人口は1500人減少し、現在は約1万1千人になった。町内に唯一あった高校も、19年に廃校となった。

 町で育った若者をいかに呼び戻すか。総務省から出向中の井上貴至副町長(30)らはアイデアを練った。副町長室のテーブルにホワイトボードを置き、自由に職員がアイデアを書き込み、検討した。

 このホワイトボードから誕生したのが、町の子供を対象にした奨学金制度を作ることだった。

 奨学金は鹿児島相互信用金庫(鹿児島市)が、高校生に月額3万円、大学生に5万円を、有利子で貸与する。卒業後、町に戻った場合、利子分を含めた返済を町が一丸となって肩代わりする。町は同金庫と奨学金の利子など詳細な制度を詰めた上で、月内にも協定を結ぶ。

 原資の一つが、町が世界に誇るブリだ。ブリ1本売れれば、東町漁協から1円を若者への「応援金」として寄付してもらう。町が用意した基金に積み立て、返済金に充てる。町によると、漁協から年間約230万円の応援金が入る見込みという。

 このほか、町内で販売されるビール1本当たり10円の「応援金」が町に入るよう、飲食店などにお願いすることも検討している。

 井上氏は「出世魚のブリのように、地元のリーダーとして町に戻ってきてほしい。過疎化に歯止めをかけ、地方創生につながる1つの仕掛け。島全体を巻き込み、今後、30年間は続く制度にしたい」と張り切っている。

 東浜漁協参事の山下伸吾氏(55)は「人口が減れば、ブリ養殖の後継者も減る。奨学金を利用する生徒が増えれば、必ずや後継者も育ち、町も活性化するだろう。ぜひ、多くの生徒に活用してもらいたい」と語った。(村上智博)