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静岡県立こども病院で世界初の心臓病手術成功 マレーシアの14歳少女

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静岡県立こども病院で世界初の心臓病手術成功 マレーシアの14歳少女

 県立こども病院(静岡市葵区)は15日、心臓が胸から飛び出し、左右の心室がねじれるなど複数の複雑な心臓疾患を持つマレーシアの少女の手術に成功したと発表した。同病院が海外の患者を受け入れたのは初めてで、同様の症例を根治的に治療したのは世界初だという。

 この少女は、マレーシア在住のリー・ウェン・ウィーさん(14)。子供の心疾患の治療では東南アジア有数とされるマレーシアの病院から「当院でも治療困難」と依頼があり、8月に県立こども病院が受け入れた。

 ウェン・ウィーさんは肋骨(ろっこつ)の一部が欠損して心臓が胸から飛び出しているほか、左右の心室がねじれ、心臓に5種類の異常や欠損がある100万人に5人という難病「カントレル症候群」を患っていた。このため、走ることはできずゆっくり歩くのが精いっぱいで、階段を上がることもできず、来日のための航空機への搭乗も危ぶまれていた。

 しかし、同病院の約30人の医療チームが、難度の高い手術を執刀し、術後の管理に万全を尽くし、家族の生活面の支援まで行うことで、根治的治療に成功した。これまでは、心臓が肋骨に守られておらず直接触れられる状態で、酸素不足のため全身の皮膚が青黒かっただけに、手術後にウェン・ウィーさんは「胸がプラスチックのように固い。顔がピンク色になった」と喜んだという。

 ウェン・ウィーさんは15日、同病院のスタッフに向かって、「本当にありがとうございます。お医者さま、スタッフの皆さまに感謝しています」とはにかみながら謝意を述べ、「帰国する前に東京ディズニーランドに行きたい」と夢を膨らませていた。

 治療にあたった同病院の坂本喜三郎副院長は「手術前は、根治的治療ができるかどうか五分五分ではなく、家族には『たぶんできないでしょう』と伝えていた。できると感じたのは、実際に胸を開いて心停止させ、心臓の状態を確認してからのことだった」と、綱渡りの手術だったことを明らかにした。

 また、初めての海外からの患者受け入れについて、瀬戸嗣郎院長は「言語の違いや家族への支援など課題も多かったが、スタッフ全員の力で何とかやり遂げた。今後も前向きに検討し、国際貢献に努めたい」と話した。

 ウェン・ウィーさんは今月中に退院できる見通しだという。

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【用語解説】県立こども病院

 子供の心臓疾患では全国トップレベルの設備と人材を持ち、各地から治療困難とされる患者が訪れる。平成19年に子供の循環器疾患を総合的に扱う「循環器センター」を開設。国内の小児専門病院で唯一、専用の集中治療室と専従の小児循環器集中治療医をそろえる。