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東日本豪雨 河川決壊、静岡県内は放水路で回避も狩野川流域あわや浸水

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東日本豪雨 河川決壊、静岡県内は放水路で回避も狩野川流域あわや浸水

 記録的な大雨により各地で相次いでいる河川の堤防決壊。今回の台風18号では、本県でも狩野川上流の伊豆天城山で400ミリ超の大雨を観測、狩野川放水路がなければ浸水被害もあり得たほどの雨量に達していたことが分かった。県内は狩野川を含め6つの一級水系を抱えており、関係者は今回の事態を踏まえて「洪水ハザードマップの活用などで、住民の防災意識を高めていく必要がある」と警鐘を鳴らしている。

 国土交通省中部地方整備局沼津河川国道事務所によると、狩野川は台風18号による大雨の影響で水位の上昇が続き、9日早朝には高さ海抜10・6メートルの狩野川放水路の堤を越えていた。同日午前7時半には、最大で毎秒2千立方メートルの水を逃せる放水路のゲートを開放し、事なきを得た。

 狩野川は昭和33年の狩野川台風で堤防が決壊し、流域での死者・行方不明者が853人に達する大被害を出している。このときは総雨量が753ミリを観測。当時狩野川の水を江の浦湾に分流する放水路の建設はすでに開始されていたが、被害を受けて水路の幅やトンネルの数が拡張された。

 同事務所の試算によると、今回の台風18号では、狩野川放水路がなかった場合、河口から9キロほどの沼津市大平地区の想定水位は海抜9・7メートルにまで上昇。堤防が耐えられる限界値の計画高水位(海抜11・8メートル)は下回るものの、氾濫で周辺地域に浸水被害をもたらす可能性もあったという。

 今回の出水では、放水路によって水位を約2・2メートル(推定値)低下させることに成功した。しかし、狩野川全体の堤防整備はまだ途上段階。同事務所では河川近くの住民に対し、洪水ハザードマップで地域の危険性を知る▽最寄りの避難場所や避難ルートを確認する▽大雨が予想される際には早めに避難する-などを呼びかけている。

 洪水の被害防止をめぐっては、さらに踏み込んだ対応を求める声もある。土砂災害や津波災害では、危険性の高い場所を都道府県が「警戒区域」に指定し、避難訓練の実施など「警戒避難体制」を整備することが義務づけられている。一部の専門家からは、洪水災害についても同様の制度の導入を求める声が上がっているが、指定されれば地価などにも影響するため、「河川の場合は対象となる戸数が多く、指定は難しい」のが実情だ。同事務所の竹内宏副所長は「まずはハザードマップを活用してもらい、万一の際には早めの避難を心がけてほしい」と話している。

 狩野川台風 昭和33年9月に三浦半島付近に上陸し、伊豆半島と関東地方に大きな被害を与えた台風。同月26日夜に伊豆半島南端に接近し、狩野川上流の湯ケ島観測所で1時間あたり最大120ミリの猛烈な雨を観測、総雨量は753ミリに達した。同日午後9時50分ごろには、土石流でせき止められた修善寺橋が倒壊し、プール約4500杯分(約220万立方メートル)の水が流れ込んで堤防が決壊。狩野川流域では、死者・行方不明者が853人、家屋の損壊・流出が8219戸に上った。