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北杜でフォトジャーナリズム先駆者6人紹介する展覧会 山梨

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北杜でフォトジャーナリズム先駆者6人紹介する展覧会 山梨

 ■時間を超越、心に訴える写真 

 フォトジャーナリズム(写真による報道)の先駆者となった6人の海外写真家を紹介する展覧会「未来への遺産 写真報道の理念に捧(ささ)ぐ」が、北杜市高根町の清里フォトアートミュージアムで開かれている。約半世紀前に世界各地を巡回した写真展をベースとした本展。紛争や貧困、人種間対立といった問題は今も存在する。展示されている同館所蔵の全161点は、「社会と関わる芸術」として写真が持つ表現力の価値を普遍的に伝える内容となっている。

 6人の写真家は、アンドレ・ケルテス(1894~1985年)▽デイヴィッド・シーモア(1911~56年)▽ロバート・キャパ(1913~54年)▽ワーナー・ビショフ(1916~54年)▽ダン・ワイナー(1919~59年)▽レナード・フリード(1929~2006年)。

 ケルテスはパリや米ニューヨークを舞台に活躍し、キャパら後進に門戸を開いた。シーモアは国連児童基金(ユニセフ)の依頼で各国の子供を撮影。キャパは短い生涯の中で5度の戦争を追った。ビショフは大戦後の荒廃した各国を回った。ワイナーは南アフリカなどで社会的な意識の高い写真を残し、フリードはニューヨークのユダヤ系社会の撮影から経歴をスタートさせた。

 世界を駆け巡った6人だが、うち4人は取材中に戦争や事故で命を落としている。

 ◆初公開

 20世紀前半、テレビが普及する以前に世界の情報を得る手段は写真雑誌だった。しかし、写真家の意図に反してトリミングされたりキャプションが変えられたりするなど写真は文章の添え物にすぎず、印刷後に廃棄されることも珍しくなかった。

 これに対し、キャパらは写真家集団「マグナム・フォト」を1947年に創設。写真家の視点を強く主張する作品の発表を続けるなど写真家の権利を守ることに尽力し、現代に通じる写真表現の世界を切り開いた。

 本展は、キャパの死後、写真家たちの作品群が遺失することを防ごうと、キャパの弟、コーネル・キャパ(1918~2008年)が1967年に企画した写真展が基になっている。当時の写真展はニューヨークを皮切りに世界各地を巡回し、68年には東京でも開催された。

 写真集は68年にオランダの出版社から発行された。使われたプリントが97年にまとまった形で発見され、同館が翌年に購入。戦後70年と開館20周年にあたる今年、初めて公開している。

 ◆「信念に敬意」

 フォトジャーナリズムという言葉は、「日々の出来事を記す」を表す「ジャーナル」から生まれた。本展のタイトルには一般的に使われる「報道写真」ではなく、あえてなじみの薄い「写真報道」が用いられた。

 同館の小川直美事務長(50)は「6人は、戦争などセンセーショナルな物事に限らず、日常の営みの中にある人間性や社会の少数派が正義と平等を求めるささやかな闘いに心を寄り添わせながら撮影することを理念としていた」と指摘。「『報道に使われる写真』という印象から離れ、写真家自身が『自分は世界をこう見た』と表現した信念に敬意を表した」とタイトル名の理由を説明する。

 68年東京巡回展の開催に奔走した写真家でマグナム・フォト東京支社代表の久保田博二さん(76)は本展について、「一連の作品群は超一級の年代コレクション。人々の心に訴える写真は、時間を超越することを改めて感じた」と評する。また、同館が写真を通して世界の若者を育てる文化支援を続けていることに触れ、「作品群がここに所蔵され、節目の年に公開されたことに大きな意義がある」と話している。

 30日まで。火曜休館(22日は開館)。入館料は一般800円、学生600円、中高生400円。問い合わせは、清里フォトアートミュージアム(電)0551・48・5599。