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埼玉知事に上田氏4選 実績と首長支援で圧勝

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埼玉知事に上田氏4選 実績と首長支援で圧勝

 任期満了に伴い9日投開票された知事選は、無所属で現職の上田清司氏(67)=維新支持=が、いずれも無所属で元総務省消防庁審議官、塚田桂祐氏(58)=自民県連推薦▽県労働組合連合会議長、柴田泰彦氏(62)=共産推薦▽元菓子製造会社社長、石川英行氏(52)▽元高校教諭、武田信弘氏(61)-の4新人を大きく引き離し、4選を果たした。投票率は26・63%で、全国の知事選で最低を記録した平成23年の前回を1・74ポイント上回った。

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 多選自粛条例を破って出馬した上田氏は、全国有数の企業誘致件数など3期12年の実績を強調。団塊の世代が75歳以上となる平成37年に向けて「4年間で道筋をつける」と訴え、医療介護ネットワークの構築などを掲げ信任を得た。

 塚田氏は上田氏の条例破りを厳しく批判、柴田氏は安全保障関連法案の廃案を訴えたが、ともに伸び悩んだ。石川氏、武田氏も主張を浸透させられなかった。

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 ■「信条曲げるも理解得られた」

 午後8時過ぎ、テレビが当選確実の一報を流すと、朝霞市三原の上田清司氏の選挙事務所は拍手と歓声に包まれた。上田氏は日焼けした顔をほころばせて支持者や県議らと握手を交わし「正論を訴えてきたことが県民の皆さんに受け入れていただいた」と選挙戦を振り返った後、バンザイ三唱で喜びを分かち合った。

 争点となった多選自粛条例破りについては「個人の信条を曲げる不名誉はあるが、県民に一定の理解を得ることはできたと感じている」と強調。前回並みの低投票率は「連日の猛暑が一因」とした上で、「相手候補の公約ビラなどを見ても、政策論争に至っていなかった。政策に関しては私が一番丁寧に県民に伝えた自信がある」と述べた。

 選挙戦では63市町村のうち55首長が上田氏を支援。連合埼玉や経済、福祉団体からも推薦を受け、優位に戦いを進めた。

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 ■柴田氏「安保廃案 今後も」

 柴田泰彦氏は、上田氏の当選確実がテレビで報じられた後の午後8時過ぎ、さいたま市浦和区の選挙事務所に入った。「頑張っていただき、充実していた」と支持者をねぎらい、険しい表情は見せなかった。

 支持者に一礼した後、「訴えた政策は予算的に非現実的なものではなかったと思う。行く先々での有権者の反応はよかったが、2台の街宣カーだけでは全県に広げられなかった」と敗戦の弁を語った。

 選挙戦で一貫して訴え続けた安全保障関連法案の廃案については「国民の暮らしに関わる問題で、今後も訴えかけていく」と述べ、「ここからまたどこがだめだったかを話し合い、次の一歩を踏み出していきたい」と前向きに語った。

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 ■塚田氏「訴える力が不足」

 さいたま市浦和区の塚田桂祐氏の選挙事務所には、午後7時ごろから自民県連の新藤義孝会長らが姿を見せ始め、投票締め切りの午後8時を待った。敗戦が濃厚になると重苦しい雰囲気が漂った。

 同15分過ぎに姿を見せた塚田氏は「大変残念な結果で、申し訳ない。正しいと考えることを訴えてきたが、私の訴える力が不足していた」と述べ、支持者らに頭を下げた。

 塚田氏は出馬表明以降、新藤氏ら自民の県選出国会議員らと県内の衆院15選挙区を1日1区ずつ回ってきた。初めての選挙戦について「急な決断だったが、埼玉の可能性を強く訴えながら暑い夏をしゃにむに進んできた。思いを形にできず悔しい」と振り返った。

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 ■投票率26・63% 前回から微増

 知事選の投票率は26・63%で、全国最低だった平成23年の前回(24・89%)をかろうじて上回ったが、19年の前々回(27・67%)には及ばなかった。

 過去2回の選挙では、自民県連、公明県本部、民主県連が上田氏に相乗り。今回は自民県連が塚田氏を推薦して対立軸を明確にしたが、投票率の大幅な向上にはつながらなかった。

 全国の知事選で投票率が低かったのは昭和56年の千葉25・38%、平成17年の広島27・14%、8年の栃木28・09%などがあり、全国のワースト5の中で埼玉が3つを占めることになった。

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 ■【視点】「無関心」に敗れた候補者たち

 上田清司氏の多選自粛条例破りの是非が大きな争点となった知事選は、上田氏が4選を果たす一方で、投票率は全国最低だった前回と同様に低迷した。県民の4人中3人が投票しなかったという現実の前に、上田氏を含む各候補者と支援に回った政党は、票数以前に「無関心」に敗れたことを自覚すべきではないか。

 特に、上田氏に不出馬を迫りながら、同氏を脅かす候補者を擁立できなかった自民の責任は重い。告示まで1カ月を切った段階で手を挙げた塚田桂祐氏に乗る形で選挙戦を進めたが、安全保障関連法案の廃案という国政の議論を知事選に絡めた柴田泰彦氏とともに、県政課題の分析と解決策は具体性を欠いた。現役閣僚を応援に呼び込みつつ惨敗した自民には、県議会で「県民与党」を掲げる資格があるのか、しっかりと自問する必要がある。

 一方で、上田氏は「条例破りの是非を選挙で問う」としたが、超低投票率での当選は「消極的信任」に過ぎないだろう。知事による条例破りは県政の汚点にほかならず、4選は免罪符とはならない。厳しい視線が注がれるこの任期には、課題解決の結果のみが求められる。(川畑仁志)