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記念館廃館決定、法廷闘争へ 十和田市と新渡戸家、深まる対立 青森

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記念館廃館決定、法廷闘争へ 十和田市と新渡戸家、深まる対立 青森

 「武士道」の著者で、五千円札の肖像にもなった新渡戸稲造(にとべ・いなぞうぞう)(1862~1933年)らの遺品などを展示している十和田市立新渡戸記念館の廃館が決まったことを受け、市と新渡戸家が対立している。耐震性を理由に掲げる市側に対し、新渡戸家側は廃館の撤回を求めて提訴する事態に。記念館には新渡戸家に古くから伝わる貴重な資料が数多く展示されており、資料の取り扱いもめぐって混迷を深めている。(福田徳行)

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 江戸時代、十和田市発展の礎となる開拓に携わった新渡戸家。昭和40年開館の記念館には、開拓の図面や稲造の蔵書・遺品、五千円札の原画になった肖像写真、「武士道」の源流ともいえる約500年前の甲冑(かっちゅう)など約8千点が保存・展示されている。

 市は今年2月、耐震調査で建物の強度に問題があるとして、4月からの休館と取り壊しを発表。補修も難しいとして廃館の条例案を市議会に提出、6月下旬に可決した。市は「強度の数値では補修できる状態ではない。市民や観光客の安全確保から廃館はやむを得ない」と話す。

 一方、記念館側は条例案可決後、青森地裁に提訴。代理人の松澤陽明(きよあき)弁護士(仙台市)は「急いで取り壊しが必要なほど本当に危険な建物なのか」と耐震性に疑義を示し、記念館の調査では強度的に問題はなく、現地を視察した建築家の話として補強は可能とする。「市は表面的に推定に基づき耐震審査をしている。設計図面を参考に耐震診断をやり直すべきだ」と異議を唱える。

 さらに問題を複雑にしているのは資料の取り扱いだ。記念館の資料の大半は新渡戸家の所有。小山田久市長は「市にとっても貴重な資料で後世に伝えなければならない。寄贈していただけるなら市の別の安全な施設に保管する」と話す。市が寄贈にこだわる背景には、記念館には年間約2300万円の維持費がかかり、個人所有物に公費を充てるのはそぐわないとの立場からだが、寄贈を拒否されても新渡戸家との話し合いの意向を示す。

 これに対し、新渡戸常憲館長(48)は保存環境の悪化を理由に難色を示し、寄贈に関しても「信頼関係があって成り立つこと。市は廃館を前提にしており、こちらは廃館の必要がないという立場」と市の対応に不信感を募らせる。市側が話し合いの意向を示していることについても、新渡戸家7代当主で新渡戸館長の父親、明さん(73)は「廃館が決まった以上、話し合いといっても資料の寄贈をできる環境にない。今後はこれから考える」と話す。

 建物の耐震強度に端を発し、文化財保護行政の在り方にも一石を投じた今回の問題は法廷闘争に発展。市と新渡戸家双方の主張は平行線をたどったまま、打開策の糸口さえ見いだせていない。