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【戦後70年 語り継ぐ静岡】七夕豪雨(下)

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【戦後70年 語り継ぐ静岡】
七夕豪雨(下)

 ■特殊な地形、ハード整備に限界

 ◆「静岡だけが雨」

 「静岡県が位置するのは日本列島の『くの字』の角。大きな天気図には出てこない、局所的な大雨が発生しやすい」。台風シーズンを前にした今月2日、静岡市葵区の静岡国道事務所で行われた気象講演会では、事務所の職員や県と静岡市の担当者ら約60人が真剣な表情でメモを取った。

 講師を務めた静岡地方気象台の内田雄二水害対策気象官によると、県内の天候には、房総半島や紀伊半島の「岬効果」で生じる大気の循環▽中部山岳で二手に分かれた気流がぶつかる局地的な前線の発生▽南北に延びる長く深い谷が生む停滞性の降水-といった特殊な地形が影響。「全国的には晴れていても、静岡だけが雨になる」といった状況が起きやすく、静岡市北部や御殿場市の山間部、天城山周辺などは、年間降水量が3千ミリ前後に達する。

 昭和49年7月7日の七夕豪雨では、本県から遠く離れた日本海上の台風8号の影響を受け、県内で梅雨前線の活動が活発化して総雨量508ミリの大雨になった。同事務所の油井康夫副所長は「台風の位置や進路だけでなく、地域にどういう気象特性があるのかを理解しておく必要がある」と警鐘を鳴らす。

 ◆教訓を生かせ

 昨年10月6日に県内に上陸した台風18号では、静岡市南部で1時間当たり降水量が約110ミリとなる記録的短時間大雨を観測。市内を流れる巴川の排水機能が限界に達したため、流域で排水溝などの水があふれる「内水氾濫」が起き、市内での家屋の破損や浸水被害は計1439戸に。市南部の30万4千世帯、71万人を超える市民が避難勧告の対象となったが、発令は大雨が峠を過ぎた同日午前9時にずれ込んだ。

 市危機管理総室によると、同市清水区能島では巴川の氾濫危険水位である4・6メートルを超える水位となったものの、河川の水が堤防を越えて氾濫する「外水氾濫」は確認されなかった。同室危機政策グループの石井克佳副主幹は「七夕豪雨後に大谷川放水路などが整備され、外水氾濫の危険性は低下している。だが、山の宅地化が進んだことで水をためる機能が失われているのでは」と指摘する。

 七夕豪雨の甚大な被害を受けてハード面での対策が進んだにもかかわらず、今後も発生する恐れのある内水氾濫。満潮時刻と重なれば更なる被害拡大も予想されるだけに、市では新たに内水氾濫を想定したハザードマップを作成したほか、県と連携して巴川の水位をリアルタイムで監視することで迅速な避難勧告の発令を目指す方針だ。

 喜沢芳治・市危機管理総室長は「百年に1度の大雨が降れば、ハード面の整備だけでは限界がある。今後は市民自らが防災意識を高めていくことも必要だ」と、目には見えない防災対策の重要性を強調した。(村嶋和樹)