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【ZOOM埼玉】認知症の“悲劇”を防げ 「理解と見守り」広がる動き

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【ZOOM埼玉】
認知症の“悲劇”を防げ 「理解と見守り」広がる動き

 認知症の増加に伴い、県内でも患者とみられる行方不明事案が平成25年は179人を数え、今年5月には草加市で認知症の疑いがある男性が長女を刃物で殺害するなど、悲劇に発展するケースが目立ち始めた。厚生労働省は10年後に高齢者の5人に1人が認知症になると推計。県は「多くの人に認知症を正しく理解してもらい、本人やその家族を見守ってほしい」と呼びかけている。(宮野佳幸)

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 県警によると、行方不明事案は25年は前年より33件増加し、徘徊(はいかい)中の認知症とみられる人が交通事故に巻き込まれるケースもあった。

 草加市の事件では、死亡した長女=当時(46)=ら家族は昨年9月、男性(77)の問題行動について市に相談し、市長寿介護福祉課が窓口となって病院や保健所を紹介して対応に当たっていた。事件当日も長女らは保健所で担当者と相談。その後長女は男性の自宅に行き、刺されて死亡した。

 草加保健所などによると、男性は医師の診察や服薬を拒んでいたといい、認知症を受け入れて治療に専念できる状況ではなかった。ただ、認知症の人は入院して治療をしたとしても、外部からの刺激が少ない生活が返って症状を進行させてしまう可能性もあるという。

 認知症に詳しい首都大学東京の繁田雅弘教授(57)=精神医学=は「認知症治療はそれぞれの環境によって問題が異なるため、改善策が一つにまとまらないのはやむを得ない」と治療の難しさを指摘し、「周囲が理解を深めて、認知症の人を受け入れる姿勢を整えることが大切だ」と呼びかける。

 行政の取り組みでは、新座市が今年から、認知症徘徊高齢者への声かけ訓練を実施している。5月の訓練には市民54人が参加し、「ゆっくり近づいて相手の視界に入る」「目線を合わせて優しい口調であいさつをする」といった声かけの方法を学んだ。

 このほか、県や各市町村が18年から、認知症に関する知識や対応の仕方を学ぶ「認知症サポーター養成講座」を実施している。厚労省の「認知症を知り地域をつくるキャンペーン」の一環で、認知症の症状や支援などについて約1時間半の講座を受講すれば認知症サポーターとして認定。認知症の人や家族を見守ってもらい、認知症になっても安心して暮らせる街づくりを目指している。

 ただ、県内の同サポーターと講師の人数は3月末現在で約21万3千人で、人口に占める割合は約2・9%と全国ワースト3位。県地域包括ケア課は「引き続き企業や学校などでも講座の開催をお願いしていきたい」と話す。

 同課によると、26年度に「認知症の人と家族の会」県支部に寄せられた相談件数は470件で、18年以降、増加傾向が続いている。今後は認知症がより身近な存在となることは避けられない。繁田教授は「症状が軽度の段階から周囲が支えることで、本人も自然と認知症を受け入れやすくなる。認知症は誰もがなり得る身近な病気だと理解し、地域で普通に暮らせるような環境を整えることが大切だ」と話している。