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【ZOOM東北 秋田発】空港使用阻んだ「協定」 六魂祭でのブルーインパルス飛行縮小

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【ZOOM東北 秋田発】
空港使用阻んだ「協定」 六魂祭でのブルーインパルス飛行縮小

 秋田市で開かれた東北六魂祭初日の5月30日に行われた航空自衛隊松島基地(宮城県東松島市)の「ブルーインパルス」の展示飛行が、福島、山形の六魂祭での12課目から8課目に縮小された問題について、ネット上などに不正確な情報が流れている。元F15戦闘機パイロットの植森治・航空幕僚監部広報室長に自衛隊の公式見解を聞いた。

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 展示課目が縮小されたことについて、植森室長は「燃料の関係だ」と説明する。松島基地との距離が福島(約100キロ)、山形(約80キロ)に比べ秋田は約170キロと長いため、燃料消費が大きいのだという。

 秋田空港には航空自衛隊秋田救難隊が駐屯する秋田分屯基地があり、滑走路を民間機と一緒に使っている。ここで給油すれば12課目可能ではないか-との問いに植森室長は「12課目がフル課目というわけではない。秋田空港を離陸して秋田市中心部で展示飛行すれば、組み合わせによっては20課目くらいできるかもしれない」と答えた。

 展示課目縮小について、秋田空港を管理する秋田県には抗議や問い合わせが相次いでいる。それに対し県総務課は「秋田空港は整備区域が狭く、ブルーインパルスを連続して離着陸させる管制も難しいため、自衛隊側としてもできるだけ避けたい考えであると伺っている」と、自衛隊に責任転嫁している。

 だが植森室長は「燃料車を運び込むなどの準備をすれば、秋田空港を使用することは十分可能で、多くの展示課目を求められたら空港を使いたい」と言い切る。救難隊など他の航空自衛隊関係者やOBにも取材したが、県から問い合わせを受けた人も秋田空港使用に難色を示す人も皆無だった。「できるだけ避けたい」と誰が言ったかについて、県総務課の村上健司課長は「言えない」としている。

 なぜ今回のブルーインパルス飛行にあたって自衛隊は秋田空港の使用を求めなかったのか。植森室長は「協定」の存在を挙げた。

 協定とは秋田救難隊が設置される3年前の昭和59年に県と防衛庁(当時)の間で結ばれた「航空自衛隊航空救難団秋田救難隊の設置運用に関する協定」と「協定についての了解事項」だ。「秋田空港に戦闘機を配備しない」「戦闘機の訓練にも使用しない」とし、使用機種を、秋田救難隊に配備されている救難捜索機と救難ヘリのほか、他の部隊については救難隊業務のための救難機、輸送機、隊務連絡機に限定している。

 救難隊幹部によると、過去にブルーインパルスと同じT4練習機の着陸が協定違反を理由に県に拒まれ、記念行事でのT4の地上展示も断られたという。

 東日本大震災の際の対応について県総務課は「米軍も含め、自衛隊に使用を全面的に開放した」と回答しているが、実際には震災のときに使用したのはC1輸送機などで、協定の範囲外の自衛隊機は使っていない。米軍機の離着陸の事実もなかった。北朝鮮が弾道ミサイルを発射した平成21年、陸上自衛隊のUH1ヘリの使用が、県にいったん断られた後、「協定の特例」として認められた。

 植森室長は「協定に定められている以外の機種は使えないという認識でやってきた。ブルーインパルスの使用は県に認められないと判断した」と話す。

 一方で、佐竹敬久知事が有事の際に秋田空港を戦闘機などが使うことは可能と発言するなど、今回の展示縮小問題を機に協定の在り方をめぐる議論が起きている。植森室長は「今後、秋田県上空でのブルーインパルス飛行要請があった場合、秋田空港の使用も念頭に考えたい」と県の対応に期待している。(渡辺浩)