記事詳細
【とちぎ解剖】
リンク栃木、新リーグへ正念場 V逸も成績アップ、観客動員増
バスケットボールNBLのリンク栃木ブレックスは今季、プレーオフ準決勝で敗れ、5季ぶりの日本一は逃したものの、昨季の成績を上回り、ホームの観客動員も2季連続リーグ1位となるなど底力をみせた。国内男子リーグの統合に道筋がつき、NBLでの戦いは来季が最後となる。転換期を迎えて注目が集まるバスケ界の「頂点」を目指すには、選手の奮起に加え、地元の盛り上がりも不可欠だ。(原川真太郎)
◇
◆チーム全員が成長
昨季は優勝した2009-10年シーズン以来のプレーオフ進出を果たしたブレックス。今季は優勝時に指揮を執ったトーマス・ウィスマン氏を新監督に招聘(しょうへい)し、主力選手も昨季とほぼ同じ顔ぶれで臨んだ。
43勝11敗、東地区2位と昨季(31勝23敗、同3位)を上回る好成績で上位8チームがトーナメントで戦うプレーオフに進出。ホーム開催の準々決勝(3回戦制)では、広島ドラゴンフライズに連勝し、準決勝に駒を進めた。
アウェーでの準決勝(同)では、アイシンシーホース三河と接戦を演じながらもあと一歩及ばず連敗。だが、ウィスマン監督は試合後、「選手たちは持てる力を全て出し切った。いずれ必ず優勝できる」と手応えを口にした。主将を務めた田臥勇太も「昨季はプレーオフ出場がギリギリの状況だったが、今季はチャンピオンを狙うところからスタートした。悔しいが、チームメンバーもスタッフも全員が成長し続けようと取り組めたシーズンだった」と締めくくった。
田臥の言う「チーム全員の成長」を端的に示すのが観客動員数だ。今季のホームゲームの平均入場者数は、リーグ1位だった昨季(2千人)を上回る2257人。NBL13チーム中、2千人を超えたのはブレックスだけだった。
日頃のプロモーション活動に加えて、プレーオフの広島戦ではチームカラーのTシャツを入場者全員に配布し着用を呼びかけるなど、ファンを楽しませようというスタッフの努力が実を結んでいる。
◆アリーナ確保めど
一方、取り巻く環境は大きく変わりつつある。長年の懸案となっていた男子トップリーグの並立問題は、NBLとTKbjリーグの統合、新リーグ発足という形で決着した。
新リーグは来年10月に開幕予定で、1部、2部、地域リーグの3部制になる見込み。十数チームの参加が想定される1部は、5千人規模のホームアリーナを確保できるめどがあることなどが条件となる。
1部参入を目指すブレックスにとって懸念されるのがアリーナの確保だが、県は現在、平成34年開催の国体に向け、宇都宮市西川田の県総合運動公園周辺に運動施設を整備する計画を進めている。
福田富一知事は「3年後をめどに5千人収容可能な新体育館を着工する」としており、4月29日に宇都宮市内で行われたレギュラーシーズンのホーム最終戦で、観戦に訪れた新リーグ運営法人理事長の川淵三郎氏に計画を説明。川淵氏も「予定が決まっていれば問題はない」と明言した。
ただ、「ハコ」が準備できても、プロとして魅力的な試合をしなければ集客は望めない。新リーグ参戦に弾みをつけるため、来季は優勝と今季以上の観客動員という「競技」と「興行」両面で高い目標を追う大事なシーズンになる。