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【被災地を歩く】宮城・石巻の立町大通り商店街 アーケード撤去、新たな街並み

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【被災地を歩く】
宮城・石巻の立町大通り商店街 アーケード撤去、新たな街並み

 宮城県石巻市の中心を通る国道398号を市役所から東へ進むと、立町(たちまち)大通り商店街がある。商店街の特徴は、両脇に約400メートル続くアーケード。しかし、今年2月28日には撤去された。ただ、街灯や歩道を整備し、開放的な街並みになったことで、商店街は印象を大きく変えた。

 立町大通り商店街振興組合によると、アーケードは昭和46年に完成。石巻のメーンストリートとして、にぎわう街の象徴だった。最盛期には111店舗が並んだが、次第に店舗や客足が減り続けた。

 時代とともにアーケードも老朽化が進み、東日本大震災では、津波で大きな被害を受けた。震災の影響で破損や傾きが生じ、2回の漏電も発生。漏電が原因とみられる火災が発生したこともあった。

 ◆愛称は虹の女神

 アーケードが崩れると危ないと考えた振興組合は、昨年3月に撤去を決定。11月から解体工事が始まった。

 新しく設置した高さ約2~5メートルの街灯には、LED(発光ダイオード)を使用。約10メートル間隔で、計66本を設置した。歩道の部分には新しいコンクリートブロックを敷いた。

 大通りの数百メートル東には、石ノ森章太郎(1938~98年)の記念館「石ノ森萬画館」がある。そのため、街のあちこちに石ノ森作品のキャラクターたちの像が並ぶ。街灯にも、キャラクターが描かれた旗がつけられた。

 振興組合は親しみをもってもらうため、4月に商店街の新しい愛称を一般募集。ギリシャ神話に出てくる虹の女神から「イーリス立町」に決まった。商店街の工事完了を祝う今月9日の記念式典の日に愛称が発表されたが、石巻の空には実際に虹がかかったという。

 通りを歩いてみると、青空の広がる街に、5月のさわやかな風が吹き抜けて気持ちがいい。しかし、道を歩く人は少なく、にぎわいを取り戻したとは言い難い。

 商店街で店を経営している女性は「アーケードを撤去しても、客足は遠のいたままだ」と肩を落とす。「商店街の店が減ったままでは、お客さんは戻ってこない。商店街を盛り上げるには新しい店を誘致するなどの対策が必要だ」という。

 ◆「にぎわい懐かしい」

 商店街からは、アーケード撤去を惜しむ声もあった。

 茶店を経営する店主の高橋仁次さん(80)は「明るくなったが、天候に左右されるようになった」と話す。アーケードがなくなったため、雨が降ると店先の商品を店内に入れないといけなくなったという。

 6~7年前まで商店街でカバン屋を経営していた70代の男性は「アーケードがなくなってしまって寂しい。涙が出そうだ」とつぶやく。「アーケードを設置したときは、商店街全体でがんばっていた。あの時代のにぎわいが懐かしい」

 かつてピーク時に100以上の店舗が並んだ商店街も、一時は約40店舗まで減少。現在は約50店舗が営業している。後継者不足で閉店していく店も少なくない。

 振興組合の高橋美江理事長(63)は「活気はまだまだ足りないが、街並みがきれいになり、ムードは良くなった」と話す。「老人に優しく、若者や子供の笑い声も聞こえてくるような街となるため、アーケード撤去が後押しとなれば」と期待を込める。

 震災からの復興に向け、新たな街へ生まれ変わりつつある石巻だが、かつてのにぎわいを取り戻すには道半ばだ。人々の生活の中心となる商業施設は復興へ大きな役割を持つ。生まれ変わった商店街が、地域の活力となることを願う。(上田直輝)