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【みちのく会社訪問】舟形マッシュルーム(山形県舟形町)

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【みちのく会社訪問】
舟形マッシュルーム(山形県舟形町)

 ■海外先進国並みの普及目指す

 山形県北部、最上地方を流れる清流、最上小国川に沿って車でさかのぼると、田んぼの中にかまぼこ形の建物がいくつも並んでいるのが見えてくる。これらが全部、マッシュルームの栽培舎というから驚く。

 「舟形マッシュルーム」は会社設立から13年余り、今は栽培舎が42棟、出荷量は1日2~2・5トン、年間約780トンに上り、全国シェアの約15%を占める。

 社長の長沢光芳さん(61)は、好調の要因について「水がよく、培地を工夫し、安全安心な食品に徹底しているから」と強調する。同社で使っている舟形町の水道水は、小国川の伏流水をくみ上げて流しているのだそうだ。

 ◆栽培法確立に15年

 地元の農家4人で立ち上げ、順調に伸びてきたが、それまでが大変だった。バブルが弾ける前の好景気のころ、名だたる大手企業や農協組織、第三セクターなどがマッシュルーム生産に参入したが、わずかな期間でことごとく撤退したという。「それほど栽培が難しい。栽培法に関する外国の解説書もあったが、肝心なプロセスのことが書いてなかった」と振り返る。

 この間、研究と試行錯誤を重ね、技術的な課題をクリアして栽培法を確立するまでに、約15年を要した。「会社が順調なのは当然」との思いは、設立前の努力があったからだ。

 生で食べられる舟形マッシュルームは無農薬栽培だ。農薬に頼って加工用を栽培したよその産地の多くは、残留農薬問題に伴う法改正で消えていったという。最初から「生で食べられるもの」を目指した同社には逆に追い風となった。

 さらに、直径15センチという「ジャンボマッシュルーム」を新たに開発するなど、販路拡大につなげた。

 マッシュルームが育つ培地は馬厩肥(きゅうひ)、麦わら、大豆の絞りかすなどの有機物に、水を加えて発酵させたもの。これを栽培舎内の棚に敷き詰め、密封した栽培舎に蒸気を流して殺菌する。栽培舎そのものが大きな殺菌ルームにもなっているのが、無農薬栽培のポイントでもある。

 ◆廃棄物ゼロが目標

 培地が有機物なら栽培後の培地や汚水も有機物。これらの有効活用も重要課題だ。生産などで発生する廃棄物を最終的にゼロにしようという「ゼロエミッション」を目指している。

 栽培を終えた培地を燃料化する試みを行っている。年間に出る培地の量は約5千トンに上るが、これが燃料になればごみはなくなる。さらに、培地を作る段階で出る汚水を、海でカキなどを養殖する際の栄養分として利用してもらうため、商品化できないか検討中だ。成分を分析したところ、栄養分の宝庫と分かったのだという。

 だが、会社の目的はあくまで「マッシュルームを海外の先進国並みに普及する」こと。長沢さんは「食感、香り、うま味の成分が抜群に多い」と、マッシュルームの魅力を語る。平成25年に西の拠点として、和歌山県橋本市に事実上の子会社を設立した。西日本での普及に、これから本格的に乗り出す覚悟だ。  (本間篤)

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 【企業データ】舟形マッシュルーム

 山形県舟形町長沢6831。資本金2725万円、従業員40人、パート45人。平成13年に有限会社として設立。マッシュルームの生産販売のほか、マッシュルーム入りレトルトカレーなどの加工品、スライス乾燥マッシュルームなどの業務用一次加工品の製造販売も行っている。(電)0233・32・8064。

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 【取材後記】マッシュルームの写真を撮っていたとき、長沢社長がそのひとつをもぎ取り、割った半分を手渡してくれた。食べてみると、とてもキノコとは思えない味。「アボカドなんかと食感が似ていますね」と感想を述べると、うなずきながら目を細めた。おいしさには、使う水の質が関係しているのではないかという。小国川の清流の恵みでもあるわけだ。会社の方針の一つに地域貢献があるが、雇用面で果たしている役割は大きい。