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谷中の下町流「おもてなし」人気

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谷中の下町流「おもてなし」人気

 ■外国人観光客、ガイドブックにない「日本人の暮らし」体験

台東区谷中の下町らしい「おもてなし」が、外国人観光客の人気を集めている。地元行事に参加する外国人観光客に、地域住民が片言の英語と身ぶり手ぶりでやりとりする異文化コミュニケーション。単なる観光スポットめぐりではなく、日本人の暮らしに触れる貴重な機会になり、「歓迎されていることを実感できる」と評判は上々だ。(植木裕香子)

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 ◆餅つき大会に参加

 「よいっしょ」「よいっしょ」。4月下旬、谷中で行われた町内会の餅つき大会で、フランス人のイバン・デュモアさん(25)は、地域住民の合いの手に合わせて餅をついていた。杵が重くてバランスを崩す一幕もあったが、「貴重な経験になった。みんなが笑顔で私を受け入れてくれて楽しかった」と言って汗をぬぐった。

 会場では豚汁も振る舞われ、「(町内会の人が)われわれ外国人にも豚汁を配ってくれた。熱すぎないように、いろいろと配慮してくれた」とオーストラリア人観光客のアン・アンダーソンさん(64)。下町のもてなしに満足そうな表情をみせ、「ガイドブックでは知ることのできない『日本人の暮らし』に触れ合えた」と語った。

 ◆旅館の呼びかけで

 町内会イベントに外国人観光客が参加するようになったのは、地元の旅館「澤の屋」の澤功館主(78)が宿泊客に参加を呼びかけたことがきっかけ。

 澤の屋は宿泊客の約9割が外国人。和室ばかりの全12部屋中、10部屋はトイレ、風呂なし。澤館主の英語も片言で、外国人にとって便利な環境とは言い難い。だが、来年1月まで予約が入っているほどの人気で、平成26年の宿泊客は約3割がリピーターだった。

 都心のホテルではなく、下町の旅館に泊まる理由をフランス人、セスキア・シャピーさん(29)が説明する。「布団で寝る経験も、誰かとお風呂を共有するのも初めて。日本でしかできない経験ができて楽しかった」

 ◆言葉より気配り

 2020年の東京五輪開催を控え、世界中から訪れる選手、観光客への「おもてなしのために…」と、観光産業にとどまらず、都内の英語熱は高まるばかり。だが、餅つき大会に参加したオーストラリア人のケイト・アンダーソンさん(28)は「高い英語力はアドバンテージになるが、国際交流に絶対に必要なわけじゃない。変に繕う必要はない」と言い切る。

 それよりも、多くの外国人観光客のハートを射止めるのは、細やかな気配りのようだ。

 澤の屋の館内には、レストランやコンビニなどを記載した周辺地図、近所の小学生が作った和菓子を紹介した英語の冊子などが置いてあり、シャピーさんは、こう評価する。

 「困ったら丁寧に説明してくれるし、質問して分からないと懸命に調べてくれる。日本人らしい“おもてなし”に居心地のよさを感じた」