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専用アプリで肥前名護屋城に“バーチャル登城”

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専用アプリで肥前名護屋城に“バーチャル登城”

スマホをかざして歩くと、画面の中の映像も移動し、名護屋城内を歩いているような感覚が味わえる

 「平成の大修理」を終えた世界文化遺産・国宝の姫路城(兵庫県)が注目を集めているが、九州には国内最大級の威容を誇り、全国からきら星のごとく諸大名が集った城がある。豊臣秀吉が築城を命じた肥前名護屋城(佐賀県唐津市)だ。佐賀県は、今では石垣しか残らないこの巨城を、CG(コンピューターグラフィックス)を使ってスマートフォンなどで細密に再現する「バーチャル名護屋城」のサービスを始めた。(小路克明)

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 大手口から砂利を敷き詰められた道を歩き三の丸へ。漆喰の美しい壁と石垣を横目にやがて、5層7階の天守がその姿を見せる。

 佐賀県立名護屋城博物館は今月、「バーチャル名護屋城」のサービスを始めた。専用アプリをダウンロードしたタブレットやスマホを手に、名護屋城跡に行くと、歩みに合わせて画面が進み、400年前の登城風景を疑似体験することができる。

 CG制作にあたっては精密な時代考証を重ねた。

 昭和51年度から数十年にかけて行われた発掘のデータと、狩野派の絵師、狩野光信による「肥前名護屋城図屏風(びょうぶ)」を基に、城郭建築の第一人者、西和夫・神奈川大学名誉教授(平成27年1月死去)が監修し、天守や本丸の設計図を書き起こし、CGにした。さらに、空からレーザーを地面に照射し、詳細な地形図を作る航空レーザー測量のデータも活用した。

 この結果、往時の名護屋城を疑似体験できるアプリが完成した。安土城(滋賀県)などでも同様の取り組みはあるが、名護屋城ほどの規模で、精密な仮想空間を作る例は珍しいという。佐賀県は、名護屋城観光の新たな魅力にしようと、こうしたバーチャル事業に4200万円を投じた。

 アプリのダウンロードは無料。また、名護屋城博物館ではアプリを入れたタブレット端末を無料で貸し出している。また、地元ボランティアによるアプリを使ったガイドツアーも近く始めるという。

 このほか佐賀県は、航空レーザー測量のデータを無料公開している。IT(情報技術)系企業やNPO法人に、名護屋城観光を盛り上げるアイデアを出してほしいという。

 名護屋城博物館の学芸員、松尾法博氏は「名護屋城跡は既存の観光ルートからは外れており、歴史ファン以外に訪れる人は少ない。より多くの人に興味をもたれるように、バーチャル名護屋城などの取り組みを進めたい」と語った。

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【用語解説】肥前名護屋城

 朝鮮出兵(文禄・慶長の役)の拠点として築かれた。縄張り(設計)は黒田官兵衛といわれる。工事は天正19(1591)年に始まり、わずか数カ月で完成したという。城の面積は約17ヘクタールと、当時としては、豊臣家の本拠地であった大坂城に次ぐ規模を誇った。周囲には全国から130以上の諸大名が集まり、陣屋が構築された。最盛期には20万人がこの地に集ったとされる。秀吉が亡くなり、朝鮮出兵が終わると城は解体された。現在、名護屋城跡と23カ所の陣跡が国の特別史跡に指定されている。