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【ZOOM東北 山形発】山形大医学部の重粒子線がん治療施設整備本格化

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【ZOOM東北 山形発】
山形大医学部の重粒子線がん治療施設整備本格化

 ■「国際的な医療拠点に」

 平成31年10月の診療開始を目指し、山形大医学部(山形市)の重粒子線がん治療施設の整備が27年度から本格的にスタートする。同施設の整備は東北・北海道では初。東北6県を中心とする61病院による広域医療遠隔カンファレンスのネットワークも構築済みで、従来に比べ格段に容易に先端治療を受けられるようになると期待されている。(本間篤)

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 重粒子線がん治療は、放射線治療の一種で、重粒子(炭素イオン)を光速の7割程度まで加速し、病巣にピンポイントで照射することによってがん腫瘍を死滅させる。痛みがなく、切開しなくてよいため体力がない高齢者でも治療でき、治療期間も短いなどのメリットがある。日本で開発された最先端の治療法だ。

 半面、設備が大がかりで多額の費用がかかるなどの難点があるが、山形大では医学・工学の連携で加速器を小型化するなどの改良を加え、施設のレイアウトをキューブ型にするなどして大幅にコンパクト化。従来の施設がサッカー場規模だったのを、40メートル四方まで圧縮し、病院に接続して建設できるようにした。

 26年度までは照射系などの研究開発が中心だったが、27年度からは装置そのものの設計・製作がスタートし、年明けには建物の工事も始まる予定だ。計画を先導してきた嘉山孝正特任教授は「これまでの研究開発から、いよいよ着工となる」と前進を喜ぶ。

 山形大の計画によると、同施設の整備費は約150億円。このうち国から割り当てられる予算以外の約40億円を寄付などで確保する意向だが、県と県内35市町村が15億円ずつの計30億円の支援をすでに決めており、資金面でも順調に進んでいる。

 また、重粒子線がん治療の開始を見越し、3月16日には広域医療遠隔カンファレンスシステムを、東北全域をエリアにスタートさせた。すでに重粒子線がん治療を行っている千葉市の重粒子線医科学センター病院と東北6県の60病院をネットワークで結び、東北各地に点在する重粒子線、陽子線、小児がん診療などの高度放射線治療施設がその患者に有効かなどについて、遠く離れた医師同士がテレビ会議システムで検討したうえで、必要な治療を施す仕組み。

 山形大医学部付属病院の根本建二がん臨床センター長は「患者が移動しなくても東北の広い範囲から相談を受けられるので、地域を越えて最適な医療を選択できる」と強調する。

 山形大の重粒子線がん治療施設も、診療開始後はシステムで重要な役割を担うことになる。重粒子線治療は保険診療の適用外で、治療費が約300万円かかるが、嘉山特任教授は「数年のうちには重粒子線治療がごく普通の治療になる。そのときに治療を受けられない人がないように、今のうちからネットワーク化が必要だ」と意義を解説する。

 山形大では同施設の年間利用者数を約600人と見込んでいるが、東北地方全体で重粒子治療に適応すると推定される患者数は、過去の統計などから3千人ほどとみており、目標は十分達成可能としている。また、その経済効果については、医療収入などの直接的な効果が年間約33億円、患者や付き添いの消費や視察などに伴う間接的な効果が同約30億円の計63億円と試算。地元雇用も年間で約670人に上るとしている。

 コンパクト化を成し遂げたことで、日本生まれの重粒子線治療施設を海外に売り込む可能性も見えてきている。嘉山特任教授は「重粒子線治療を突破口に、山形を国際的な医療拠点、インターナショナル・メディカル・シティーにしたい」と将来像を描いている。