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【みちのく会社訪問】あじまん(山形県天童市)

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【みちのく会社訪問】
あじまん(山形県天童市)

 ■大判焼きチェーン290店展開

 スーパーの入り口付近で大判焼きのプレハブを見かけるが、「あじまん」は東北・関東を中心に約290店舗を展開する。佐藤友紀(とものり)社長(50)は「ここまでこられたのは商品力のおかげ。支持されてきた味はこれからも変える考えはない」と力を込める。今季で50年を迎え、さらなる展開も視野に入れる。

 あじまんのルーツは、佐藤社長の母親の二三子(ふみこ)さん(故人)が、行商人から北海道十勝産の小豆を買い、あんこにして大判焼きを作り、夫の清治さん(同)が経営するスーパーの店頭で販売したのが始まり。昭和40年のことだという。

 スーパーはその後、廃業したが、跡地のプレハブで大判焼きだけは続けたところ、おいしさが評判を呼び人気商品に。これに目を付けた清治さんが同55年、天童市と近隣に「あじまん」のネーミングで17店舗を開店した。おいしさに加え、「味自慢」から思いついたというネーミングも奏功して店舗数は増えていった。

 ◆十勝産の小豆だけ

 原料は二三子さんが使ったのと同じ十勝産の小豆だけ。製法も昔のままで、他の大判焼きと比べて厚みがあり、あんこがぎっしりつまっているのが特徴だ。「各地の大判焼きをずいぶん食べ歩いたが、あじまんに勝るものはないというのが正直な気持ち」と佐藤社長は胸を張る。

 大判焼きは寒い季節の商品で、夏場は消費が落ちる。対策として、あじまんに匹敵する夏の商品を開発することが、先代以来の悩みの種だった。佐藤社長が受け継いだ平成7年以降もアイス、かき氷、クレープなどありとあらゆるものに挑戦してきたが、どれもうまくいかなかった。

 「夏場の商品のことはいつも頭から離れなかった」が、それが「うちは夏が苦手というよりも冬が得意なんだ」と考え方を変えた。「短所を直すより長所を伸ばせばいい。夏は捨てることにした」という。

 10月~3、4月の冬季だけに絞るのはよいが、それ以外の期間は売り上げがゼロになる。冬だけで1年分を稼がなければならない。もうひとつ、実際に店舗で働いている女性の雇用問題もあった。

 スリム化のため、各地の営業所は廃止。売店の女性従業員は冬季限定で働いてもらう一方、年間雇用は10人余りに絞った。佐藤社長は「資産を持たない、人を持たない、持たざる経営」と解説する。冬季に特化して既に14年になる。

 ◆関東でも展開

 6年からは秋田県を皮切りに県外に進出し、24年からは関東でも店舗展開を始めた。店舗総数は現在、約290。エリアは東北6県と新潟県、関東の神奈川を除く1都5県に及び、関東だけでも27店舗を数える。

 佐藤社長は「5年後をめどに最低でも店舗数を今の1・5倍にしたい。そして10年後には2倍を目指す」と目標を語る。「あじまんをもっと多くの人に食べてほしい。関東の人たちにも、冬のおやつとして喜んでもらいたい」。それが関東進出の真意だ。(本間篤)

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 【企業データ】山形県天童市乱川3の6の1。資本金1千万円。従業員は各店舗の女性従業員を含め約600人、本部社員は13人。昭和40年に設立、平成22年に会社名を「あじまん本舗」から「あじまん」に変更した。あじまん(105円)はあんこのほか、カスタードクリームのものなどがある。たこ焼き「たこポン」(同6個入り250円)も扱っている。(電)023・653・1144。

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 【取材後記】「あじまんは主食ではないから、あってもなくてもよい商品。でも、そういう商品だからこそ、おいしくなければ買ってくれないし食べてくれない」。佐藤社長が強調する“商品力”の意味だ。短所を直すより長所を伸ばすという発想は、その商品力に裏付けられて出てきたのに違いない。冬季だけの営業というユニークな業態が成功したのも、独自の味をしっかり守り続けきたことの結果なのだろう。