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【キラリ甲信越】長野県上松町出身・大道久司選手

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【キラリ甲信越】
長野県上松町出身・大道久司選手

 ■「アマ相撲2冠」出羽海部屋に入門

 上松町出身の東洋大相撲部4年、大道久司選手(22)が大相撲の出羽海部屋に入門することになった。高校生まで木曽町で相撲の腕を磨き、進学した東洋大で昨年のアマチュア横綱と学生横綱の2冠に輝いたという木曽の期待の星。3月の春場所デビューに向けて「自分の持ち味、スピードのある押し相撲を磨いて、頂点に立てるよう精進する」と固く誓った。(三宅真太郎)

 ◆「すごく悩んだ」

 「プロ入りを決断するまでにはすごく悩んだ」。1月末に同大で行われた入門発表の記者会見。緊張した面持ちでこう打ち明けた。大道選手は当初、相撲部のある和歌山県庁への就職が決まっていたが、昨年12月の全日本選手権で優勝してから、プロ入りに気持ちが傾いた。父の春男さん(66)は「プロは体一つの厳しい世界。苦労はさせたくない」と反対したが、大道選手は「憧れの大相撲でやれるとこまでやりたい」と何度も説得を続けた。

 背中を押したのは出羽海部屋の出羽海親方からの「部屋を再興したい。力を貸してほしい」という一言だった。出羽海部屋は、現存する部屋の中で最多の9人の横綱を輩出した名門だが現在は関取(十両以上)がいない状況。「意気に感じた」という大道選手は春男さんに入門の決意を告げ、春男さんも納得した。

 ◆「前進あるのみ」

 大道選手が相撲を始めたきっかけは、小学1年のときに木曽町で開かれた相撲大会に出場したこと。「かけっこではいつも一番で、体も大きかったし運動神経には自信があった」と言う大道選手だが、初めて挑戦した相撲で自分より体の小さな相手に負けた。負けず嫌いの魂に火がつき、木曽少年相撲クラブに入り相撲一筋の人生が始まった。「すり足やしこ踏み、ぶつかり稽古など基本を怠らない努力家」。大道選手を小学生の頃から指導した木曽相撲連盟の植原延夫会長(74)はそう評価する。

 その後、大道選手は地元の福島中学、木曽青峰高校に進んで相撲を続けたが、高校での成績は国体3位、インターハイは8強留まり。頭角を現したのは東洋大に進学し、相撲部に入部してからだ。

 「いつもまじめで熱心。基礎練習を怠らなかった」と同大の浜野文雄監督。小学生の頃からコツコツと練習を続けた成果が実り始め、大学では個人タイトルを15も獲得した。「一度勝ったら癖がついた。優勝したときの気分が忘れられなくて…」と、大道選手は笑いながら語る。

 大道選手は、アマチュア横綱と学生横綱の2冠を獲得したことで、大相撲の幕下10枚目格付け出し資格を得ることになった。仮に7戦全勝すれば一気に幕内(十両)に入れるいわば出世コースだが、「特別な思いはない。上に上がり部屋を引っ張っていきたいだけ」と言い切る。同じ道をたどった先輩は幕内の遠藤。学生時代は2勝3敗で負け越しており「早く追いついて抜いてやろうという気持ち」と闘志を燃やす。

 昨年7月の南木曽町土石流災害や同9月の御嶽山噴火災害で多くの命が失われた故郷の木曽地域にも、「みんな落ち込んでるだろうなと心配だった」と思いをはせる。「自分は後ろは向かない。そんな姿を見せて地元を勇気づけたい」と力強く語る。

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【用語解説】幕下付け出し資格

 学生・アマチュア時代に好成績を残した力士を幕下からデビューさせる制度。全日本選手権▽全国学生選手権▽全日本実業団選手権▽国民体育大会-のいずれかに優勝すると15枚目格。全日本選手権に優勝し、他の3大会のうち1つ以上を制すると10枚目格として幕下から始められる。デビュー場所では番付には載らず幕下で相撲をとり、その成績次第で翌場所の番付が決まる。幕下10枚目格付け出しは現行制度では市原(元幕内清瀬海)、遠藤に続き3人目。