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前橋市がLRTに熱視線 高齢者の移動手段に可能性探る

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前橋市がLRTに熱視線 高齢者の移動手段に可能性探る

 前橋市が次世代型路面電車「LRT」に注目している。高齢者に優しく、自動車に比べて二酸化炭素(CO2)の排出を抑制できるとして欧米で活用が進んでいる。国内では富山市がすでに導入し、お隣の栃木県でも県都、宇都宮市が導入に向けた準備を進める。“車社会・群馬”で運転に不安を抱く高齢者の移動手段をいかに確保するか-。市は10日、専門家による講演会を開催、導入の可能性に向けた議論を始めた。(大橋拓史)

 日本自動車工業会によると、県内の100世帯当たりの自家用車保有台数は168・1台で全国3位(平成25年3月末時点)。老若男女を問わず、車は欠かせない存在だ。県総合交通センターによると、免許を持つ65歳以上の高齢者は平成26年末で33万1684人に上り、免許保有者全体の23・4%を占める。

 ただ、加齢に伴う身体機能や認知機能の低下などから運転に不安を感じ、免許を自主返納する人が年々増えているのも事実。今後、運転をしなくなった高齢者の暮らしをどう支えていくかは喫緊の課題といえる。

 そこで前橋市が注目するのがLRTだ。車両が低床のため、高齢者や車椅子利用者らも使いやすい。中心市街地と市内各地を効果的に結びつけることができれば、社会的弱者の移動手段として期待できるというわけだ。

 10日に前橋プラザ元気21(同市本町)で行われた講演会で、関西大の宇都宮浄人教授は「LRTが人の動きを変え、中心市街地を活性化させている例は国内外にある」と強調した。

 一方、LRTは既存の道路に電車が走るため、渋滞を引き起こす▽人口減少の中で採算が取れない▽設置に膨大な投資が必要-といった課題もある。

 宇都宮教授はこうした課題に対し、路面電車が走れば車の利用者が減り、空間利用が効率的になることからスムーズな道路交通が可能▽欧米では公共交通は社会資本とされており、事業単体で「赤字・黒字」の議論をせず、公費を投入している-などと指摘した。

 かつては群馬にも高崎、前橋、渋川、伊香保を結ぶ路面電車(伊香保軌道線)が走っていたが、1950年代に路線バスの普及などから廃線となり、その後は車社会へと移行した。

 路面電車の“復活”は中心市街地の衰退が叫ばれて久しい市の起爆剤となる可能性を秘めている。市交通政策課は「導入となれば線路敷設など、一からの作業が必要で市単独でできる話ではない。市民や事業者の意見を聞き、選択肢の一つとして可能性の検討から始めたい」としている。

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【用語解説】LRT

 Light Rail Transit(次世代型路面電車)の略。従来の路面電車よりも車両を低床化し排ガスを出さず環境に優しい。欧米を中心に導入が進み、国内では、中心市街地に都市機能を集め徒歩や公共交通機関だけで暮らせることで、高齢者が病院や福祉施設に通ったり買い物に出掛けたりしやすくなる「コンパクトシティー政策」を進める富山市が街づくりにLRTの活用を位置付けている。栃木県でも宇都宮市が導入を計画している。