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【振り込め詐欺 誰がだますのか】「受け子」アルバイト感覚 埼玉

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【振り込め詐欺 誰がだますのか】
「受け子」アルバイト感覚 埼玉

 ■「詐欺のカネと知らなかった」繰り返す少年

 「割のいい仕事があるんだけど…」。さいたま市に住む少年(19)は、居酒屋のアルバイト中に客の男にかけられたこの一言から、人生が狂った。

 「頼んだ場所に行って荷物を受け取るだけでいい」。男の話しぶりから、すぐに振り込め詐欺だと気付いた。断ると、男は「代わりに誰かを紹介してくれたら仲介料をあげる」と持ちかけてきた。お金は欲しい。少年は会社の同僚だった無職の少年(18)=深谷市=を紹介した。

 この無職少年が、さいたま市の女性(66)から現金をだまし取ろうとして逮捕された。甘い声をかけた男は「カネが手に入らなかったのはお前のせいだ。お前がカネを出せ」と脅してきた。友人や親からカネをかき集め、数十万円を男に手渡した少年は、結局、詐欺の「受け子」に仕事を仲介したとして昨年夏、詐欺未遂容疑で県南の署に逮捕された。

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 「荷物を受け取ってと頼まれたから、やった」

 受け子役で逮捕された別の事件の少年は、接見した弁護士に悪びれず答えた。弁護士は「嘘をついている感じではない。普通の人ならそういう話をされた時点でおかしい、危ないと思うものだが、そういう意識がないのか」と首をひねる。

 だが、捜査関係者は「入れ知恵」を指摘する。

 「捕まっても『詐欺のカネだとは知らなかった』と言い続ければ、20日後には釈放される」

 犯行前、少年らは犯罪組織の上部の人間からこんな指示を受けるという。携帯電話で伝えられ、上に誰がいるのか最後まで分からない。名前も知らない人物からスーツや電車代などを支給され、指示された場所に出向いて「息子さんの代理人です」などと名乗り、心労で疲弊した高齢者らから現金を受け取る。

 たとえ県警の「だまされたふり作戦」によって逮捕されても、取り調べで「詐欺のカネだとは知らなかった」と繰り返すのだ。

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 「1回荷物を持ってきてくれたら、5万円あげるよ。そう言われたら、やってみたい子はいますか」

 1月30日、久喜市立久喜東中学校で行われた県警による非行防止教室。集まった約430人の生徒から、ちらほらと手が上がった。女性指導員は「正直ですね」と笑いながら、「そんなふうに興味本位やアルバイト感覚で、詐欺に加担してしまう人がいるんです」ときつくクギを刺した。

 県警少年課によると、県内で検挙・補導される少年は減少傾向だが、詐欺などの知能犯罪は年々増加。振り込め詐欺に加担した少年は平成21年に4人、25年には26人に増えた。警視庁が昨年10月、越谷市の市立中3年の少女(15)を逮捕したケースもあり、未摘発を考えればこれらの数字は氷山の一角にすぎない。

 同課では昨年4月から、非行防止教室などで振り込め詐欺に関する指導に力を入れている。今泉咲子巡査部長は「何が犯罪なのかを子供たちにきちんと伝え、未来ある人生を台無しにしないでもらいたい」と力を込める。

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 増加の一途をたどる振り込め詐欺。誰が、どんな手口でだましているのか。実像の一端に迫ってみたい。