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【祥瑞をつかめ 未年の戦略】長府製作所・橋本和洋社長(62)

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【祥瑞をつかめ 未年の戦略】
長府製作所・橋本和洋社長(62)

 ■「技術磨き、リフォーム需要取り込む」

 長府製作所は規模の割に、さまざまなジャンルの商品を作っているのが特徴です。

 その源泉となるのが生産技術です。プレスや溶接、塗装など基礎的設備を工場内に保持し、コントロール基板なども内製しています。製造業として組み立てだけではなく、1枚の鉄板から一貫生産できる。基本的な技術を大切にしているからこそ、開発・生産能力を維持し、ユニークな商品を産み出すことができるのです。

 例えば、停電になっても水とガスや灯油さえあれば、家族4人が3日間、シャワーや洗顔ができる給湯器や、入浴後の浴槽に残った熱を40%も回収する給湯器も当社独自の製品です。

 暖房機を生産販売するグループ会社のサンポットは、地中熱を利用するシステムも作り上げました。地中熱は年間約15度と安定しているので、北海道などの寒冷地では非常に有効です。パイプを地下に埋める費用が約100万円と一般家庭ではかなり高額ですが、将来有望な再生可能エネルギーといえるでしょう。

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 こうした新しい技術も含め、長府製作所の売り上げの約半分は給湯器です。石油、ガス、電気、太陽熱など全てのエネルギーに対応した給湯器を生産販売している日本で唯一のメーカーです。その全てのエネルギーに関して、省エネ機能を高めることを目標にしています。

 燃焼した石油の95%を熱に変えることができる「エコフィール」、ガスを使用する「エコジョーズ」など、給湯器のうち半分くらいはすでに高効率型になっています。高効率型の比率をどんどん高め、エネルギー削減に貢献していきたいと考えています。

 ほかにもガスなどから取り出した水素と空気中の酸素を化学反応させ、電気をつくり、発電時に発生する熱でお湯をつくる家庭用燃料電池「エネファーム」では、熱回収部分を当社が作っています。あらゆるエネルギーで業界最高を目指し、高効率化していくことが使命だと考えています。

 毎日の生活の「快適さ」も追求しています。

 高齢化の進展に伴い、冬に寒いお風呂場で血圧が急変動し、死に至るヒートショックが社会問題となっています。対策として、リモコンのボタンを押せば、シャワーとミストが同時に出て入浴前に浴室を暖める「シャワ暖」というシステムバスを市場に投入し、好評を博しています。今年も便利は減らさず無駄を減らす「省エネ」と「快適さ」を掲げて邁進(まいしん)します。

 こうした新しい商品だけではなく、従来のお客さまのニーズに応えることも忘れていません。

 例えば、いまだに薪(まき)用の風呂釜を作っています。バーナーで着火し、後は薪でたく風呂釜です。かつては数十社もあったのですが、現在まで作り続けているメーカーはほとんどありません。そんなのが売れるのかとも思われるでしょう。でも、買い替え需要で1カ月に100台単位で売れているのです。太陽熱温水器も同様です。昭和50年代に数多くのメーカーが手がけていましたが、かなり減ってしまいました。しかし当社では改良しながら作り続けています。お客さまのニーズがある限りは、できうる限り作っていきたいと、思っています。

 主力商品である給湯器の買い替え時期は10年、お風呂は20年といわれます。

 今後、新規住宅着工戸数の増加は見込みにくいところがありますが、リフォーム需要はかなり期待が持てます。いかにリフォーム需要を取り込み、新しい機器を開発できるかが、われわれ住宅設備メーカーにとって鍵になるでしょう。

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 昨年は消費税導入前の駆け込み需要が好調で、3月までは売り上げが約2割伸びました。その後、反動減で落ち込み、特に10~12月が非常に厳しかった。増税に加え10月、11月が暖かく、給湯器、暖房器とも非常に悪かった。でも、今年のムードはよいかなと思っております。

 アベノミクス効果で株価が上がってくれば、いい影響が出ますし、ほどよい円安であれば、輸出に期待もできます。当社も以前、欧州を中心にエアコンなどを販売し、海外で50億円弱の売り上げを達成しました。ですがリーマン・ショックとユーロ急落で、輸出額が減少してしまいました。

 しかし、この円安で、オーストラリアや欧州などへの輸出が、再び伸び始めています。

 政権が掲げる「地方創生」にも期待しています。日本の地方には、すばらしい技術を持った企業が数多くある。こうした企業同士が提携する手助けを、国や県など行政がしていただければよいのではないでしょうか。当社も良い提携先があれば積極的に検討したいと思っています。

 安倍首相には、安定政権で継続的な政策を行ってほしいですね。政権がころころ変わるようではよくありません。どんどん成長戦略である第3の矢を放って、岩盤規制を突破し、民間の活力を引き出してほしい。できるだけ長く政権の座に留まり、経済政策を進めてもらいたい。おひざ元の企業としても切望しています。

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【プロフィル】橋本和洋

 はしもと・かずひろ 昭和27年3月1日、山口県生まれ。九州工業大工学部卒。50年、長府製作所入社。取締役滋賀工場長、同製造本部長などを経て、平成24年3月、社長に就任。